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“PRIDE史上最悪の大乱闘”から始まったシウバとジャクソンの因縁…「エプロンに血だまりが」カメラマンも戦慄した“残酷なKO”が生まれるまで 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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posted2023/06/10 17:00

“PRIDE史上最悪の大乱闘”から始まったシウバとジャクソンの因縁…「エプロンに血だまりが」カメラマンも戦慄した“残酷なKO”が生まれるまで<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2004年10月の『PRIDE.28』、ヴァンダレイ・シウバとクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンの2度目の対戦。この直後、衝撃的なKOシーンが生まれた

 両者の対戦は、乱闘から8カ月後に実現した。PRIDEは2003年8月から内外の強豪選手8名を集めたミドル級グランプリを開催。同年11月の東京ドームで、1回戦を勝ち抜いた4選手によるワンデイトーナメントで勝者を決めることになった。シウバは吉田秀彦を判定で、ジャクソンはUFCからの刺客チャック・リデルをTKOで下して決勝へ勝ち進んだ。

合計22発の膝蹴りで地獄を味わったジャクソン

 試合開始直前、リングで顔を合わせた両者は「早く殴らせろ」と言わんばかりに、まばたきひとつすることなく睨み合う。ゴングと同時にシウバのパンチに合わせて、ジャクソンがタックルで抱え上げスラムを狙う。シウバは立ったままフロントチョークで絞め上げるが、その態勢のままグラウンドへ。ジャクソンが上から強烈なパウンドや膝蹴りで追い詰める。致命的なダメージを避けるように、シウバは防御に徹する。

 ジャクソンは攻め疲れたのか手数も減り、動きが止まったところで、スタンドから試合は再開。このままでは劣勢と判断したシウバは、打撃で勝負に出た。パンチ、膝蹴り、パンチ、膝、膝、膝。ジャクソンは思わずダウンするも、倒れた顔面にはシウバのサッカーボールキックが炸裂。それでもジャクソンは立ち上がるが、再びの膝地獄が待っていた。1発、2発、3発……首相撲の姿勢で笑みを浮かべるシウバの鋭利な膝蹴りが、ノーガードの顔面に突き刺さる。レフェリーが試合を止めると同時に、ジャクソンはその場に崩れ落ちた。フィニッシュに至るまで、シウバが繰り出した膝蹴りの数は22発だった。

 シウバに対して「うちに帰って俺のためにベルトでも磨いとけ」と挑発したことを、ジャクソンは後悔したのだろうか。

 いや、彼に限ってそんなことは絶対に認めないだろう。

 シウバはグランプリで優勝した後も快進撃を続ける。2004年2月には美濃輪育久(現ミノワマンZ)を1分9秒でKO。同年8月には近藤有己と対戦し、2分46秒で踏みつけによるKO勝利。他の追随を許さない圧倒的な強さを誇った。

 一方のジャクソンも2連続KOと、シウバ以外の選手に対しては格の違いを見せた。特に2004年6月のヒカルド・アローナ戦は印象的な試合だった。シウバの次期挑戦者と見られていたアローナが仕掛けた三角絞めを持ち前の怪力で高々と持ち上げ、そのままマットに叩きつけるパワーボムで失神KOした場面は、いまだに多くのファンの語り草となっている。

【次ページ】 再戦前にも挑発合戦「あいつは多分バカなんだろう」

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