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プロ野球5球団のスカウトが熱視線「高校時代は超無名、野球はやめるつもりだったのに…」ドラフト上位候補に急浮上した北海道の183cm左投手 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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posted2023/06/06 17:01

プロ野球5球団のスカウトが熱視線「高校時代は超無名、野球はやめるつもりだったのに…」ドラフト上位候補に急浮上した北海道の183cm左投手<Number Web>

今秋のドラフト有力候補、星槎道都大の滝田一希投手(183cm78kg・左投左打)

 勝負球で力んで、ストレートをふかして(高めに抜けて)しまうのがもったいない。

 とはいえ初球、左打者の顔面あたりに速球が抜けた後、一転して、対角線の外角低めにクロスファイアーを2つ続けて追い込んでしまう。こういうピッチングをされると、打者は想定が作れなくなって頭が混乱し、思わぬボール球に手を出してしまって、凡退を繰り返す。

 効果的な荒れ球……そのへんも、滝田投手の持ち味のようだ。

 別の監督さんは、こんな解説をしてくださった。

「去年までの滝田君は、威力抜群のまっすぐと、抜けたまっすぐとの差がもっとハッキリしてましたね。この春は、それがだいぶコンスタントになってきて、長打にされそうなまっすぐはほとんどなくなってきたように思います。素晴らしいクロスファイアーで空振り三振奪った次のバッターに、ストレートの四球……みたいな荒れ球はあまり変わってないようにも見えますが」

「大野君(中日)ぐらいしか思い出せませんね」

 捕手の真後ろの位置から見て、投げる投手の体の面積が大きく見えていると、打者は打ちやすい……そう聞くので、ネット裏スタンドに上がり、捕手後方の角度から、滝田投手の投球動作を見る。

 なるほど……と思う。右足を踏み込んで、両肩のラインがまっすぐ捕手方向を向いている瞬間、滝田投手の体は「1本のタテ線」にしか見えない。

 次の瞬間、体の左右を一気に入れ換えるような動きで腕が振り下ろされると、球筋は安定して、リリースの一瞬に確かな指のかかりを感じる。

 逆に、ユニフォームの胸のマークがはっきり見えるような時は、確かに体の「面積」が感じられ、腕が頭から離れた位置から振り下ろされて、リリースでも指先から放り投げられているように見え、ほぼ投げ損じとなる。同じ監督さんが語る。

「そのへんで、まだ時々ブレてますね、滝田君は。でも、私、今まで長いことピッチャー見てますけど、滝田君ほどの球威と角度と身体能力持った左ピッチャーなんて、そうだなぁ……佛教大の頃の大野君(雄大・中日)ぐらいしか思い出せませんね」

 身体能力……そうだ、その片鱗を見せてくれたシーンもあった。

 走者一塁での送りバント。転がったボールにとっつくスピードの速いこと。さらに、二塁に投げる体勢にしてからボールを拾い、ノーステップで投げた二塁送球が、ベースの手前でグーンとホップしたように見えたから、驚いた。教えてもどうにもならないスピード感と力感。「身体能力」で送りバントを封じてしまった。

 強風と冷たい小雨が体温をどんどんと奪っていくコンディションの中、躍動感あふれる投げっぷりで、先発の7イニングをわずか1安打。4四球は与えたものの10個の三振を奪って、北海道大打線を無失点に封じた滝田一希。

5球団のスカウトが熱視線…現場の評価は?

 寒さに震えながら、5球団のスカウトたちが、ネット裏から視線を注いでいた。

 ちょっと訊いてみた。

 東洋大の細野(晴希)君(※同じく左投手、今年のドラフト有力候補)と、どっちが好きですか……。

「うーん……」と、返事に困ってから、10秒ほど沈黙があった。

【次ページ】 5球団のスカウトが熱視線…現場の評価は?

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