“失われた2年”を補って余りあるほどの活躍を

　休場中だった横綱照ノ富士が出場し、霧馬山が大関取りに挑む今場所、再入幕の元大関を優勝候補の一人として名前を挙げる向きも少なくない。初優勝を果たし、トランプ大統領（当時）からアメリカ合衆国杯を手渡されたのは、ちょうど4年前の夏場所だった。

　初日は千代翔馬を会心の相撲で寄り切って勝利すると「（夏場所は）験もいいですし、不祥事を起こした場所でもあります……。全然、笑ってくれないですね（苦笑）」と本来の茶目っ気を取り戻すと「優勝した場所でもあり、過ちをおかした場所でもあり、それは過去のこととして、この場所でいい成績を残したい」と改めて表情を引き締めた。

夏場所9日目、朝乃山は竜電を寄り倒して勝ち越しを決めた　©JIJI PRESS

　初日から快調に白星を積み重ねるも「伸び伸び取りたいけど、負けたくない気持ちで体が硬くなっている。無心で楽しく相撲が取れれば」と完全復活にはまだもう少し、時間を要しそうだ。連勝は8日目にストップしたが、元大関が優勝戦線に加われば、場所の展開も俄然、面白くなる。

　3場所続いた1横綱1大関という寂しい番付も充実した関脇、小結陣の台頭により、早晩解消されるであろう。その中に朝乃山が割って入れば、にわかに復活の兆しを見せている相撲人気の救世主的な役割も担うことになるだろう。29歳の元大関が登場するときの、あの何とも言えない温かみを含んだ盛り上がりには、“失われた2年”を補って余りあるほどの活躍を期待するファンの願いも込められている。

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