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「ブアカーオ、まだまだ強いじゃん…」安保瑠輝也との“13歳差の闘い”に驚いた…ブアカーオが試合後に明かした“変わらない闘争心”の正体 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2023/05/14 11:05

「ブアカーオ、まだまだ強いじゃん…」安保瑠輝也との“13歳差の闘い”に驚いた…ブアカーオが試合後に明かした“変わらない闘争心”の正体<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

RIZIN初出場となった安保瑠輝也戦、40歳ながら健闘を見せたブアカーオ

延長戦があったらブアカーオが勝っていたかも

 27歳、これからピークに達しようという選手が40歳の選手に勝てなかった。だがRIZINの榊原信行CEOは、この試合について安保への不満よりもブアカーオを称えるコメントを残している。ブアカーオが勝っていたという見方もあるのではないか、とも。またブアカーオと対戦し、K-1解説者として安保の成長を見てきた魔裟斗はこの試合で解説席に。試合後に更新されたYouTubeの動画では、延長戦があったらブアカーオが勝っていたかもしれないと語った。

 つまり“安保が情けなかった”というよりも“ブアカーオが強かった”試合だ。1ラウンドは安保が優勢。スピードの乗ったパンチに加え、得意技の二段蹴りも出た。ところが、2ラウンドからはブアカーオが圧力をかけ始める。目立つのはブアカーオが安保の攻撃をかわし、直後に蹴りを返すという展開だ。ブアカーオが距離感を掴んでおり、だから安保はなかなか前に出られない。

 安保のパンチがヒットする場点もあったのだが、やはり下がりながらでは十分な威力は出ないのだろう。

「異常なタフさ」ブアカーオは実際何が強かったのか?

「百戦錬磨、ポーカーフェイス。効いた攻撃もあったはずなのに、顔に出さずに前に出てくるんですよ。異常なタフさでした」

 試合後の安保はそう振り返っている。判定は0-0、ジャッジ3者とも引き分けにつけた。だが、より細かく採点するなら、1ラウンドが安保、2ラウンドと3ラウンドがブアカーオに見えた。筆者の採点では29-28でブアカーオ勝利。それくらい、ブアカーオの動きがよかった。

 スピードやパワーでは、若い安保のほうが上かもしれない。だがブアカーオには豊富な経験、ムエタイ特有の技術戦で培われた試合運びやインサイドワークがある。“バチバチ”の打ち合いが好まれるK-1でチャンピオンになったブアカーオだが、彼の強さは真っ向勝負だけではないのだ。

 筆者が初めてブアカーオを見たのはK-1参戦前の2002年。ムエタイの殿堂ルンピニースタジアムで開催された国際トーナメント『ムエマラソン』だった。ブアカーオは決勝戦で日本が誇るアグレッシブファイター小林聡を首相撲で絡め取り、何もさせずに判定勝ちを収めている。ブアカーオは“打撃戦をしない”というオプションさえ持つ選手なのだ。安保戦でのブアカーオは、強さと巧さ、エネルギッシュさと円熟味の両輪が見事に駆動していた。

【次ページ】 ブアカーオが試合後に明かした思い「まだ闘争心がある」

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