甲子園の風BACK NUMBER
甲子園出場時に寄付金「1億4000万円」の野球熱…「離島の希望」隠岐高が部員ゼロから“奇跡の復活”を果たすまで「部活がなくなって気づいた」
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byYuki Kashimoto
posted2023/05/06 11:03
20年前に甲子園出場を果たした隠岐高校OBの岩水潤さん・藤野真一郎さん、安部大地部長、OB岩水潤さん、渡部謙監督、OB平田稔さん
新学期のグラウンドで…「桜が咲いた」
迎えた新学期――。2023年4月3日。誰もいなかったグラウンドに、8人もの新入部員が集まっていた。島外から5人、島内から3人。この8カ月間、渡部が熱心に声をかけ続けてきた中学生たちだった。勇気をもって「ゼロ」の野球部に入ってくれた選手たちを見て、渡部は万感の思いで誓った。「僕たちは部員100人で甲子園出場を目指すようなチャレンジはできないけれど、一緒に別の形でチャレンジをしていこう」。野球部の再開を祝うように咲いた、満開の桜をバックに記念写真を撮った。
実はこの話には、続きがあった。初練習の数日後、予期していなかった1人の入部希望者が現れたのだ。他の部活動に入っているが、中学まで野球をやっていて一時はやめたものの、また野球がやりたくなったそうだ。「これは間違いなく、WBCの効果だと思いますよ。こういう選手を大切に育てていきたいですね」。兼部を認め、一緒にうまくなっていこうと話し合った。
WBC優勝が伝えようとしたこと、記者会見で栗山英樹監督が言いたかったのは、まさにこういうことだろう。悠久の夢は、海を越えて続いていく。3名の女子マネージャーを含めた新入部員が入り、12人になった野球部。球音響くグラウンドを観に、また隠岐に行きたいと思っている。
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