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誹謗中傷を見て「競技を続ける意味あるのかなぁ」32歳で引退、下門美春に聞いた“女子陸上選手の日常”「集団走で後輩のナプキンが落ちて…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2023/05/04 17:01
プロ選手となり、批判もダイレクトに届くようになったと語る下門美春さん。SNSでの批判や生理など選手として直面した問題を明かしてくれた
楽しそうな投稿が目立つSNSだが、下門さんは現役時代、いろんな意味で影響を受けたという。
「ツイッターでは、応援してくれる人もいましたが、誹謗中傷もあり、それを目にするとやっぱり落ち込みますね。こんなに言われて競技を続けている意味があるのかなぁ、なんでこんな風に言われないといけないのかっていっつも思っていました」
SNS上でアスリートに向けられる声は、好意的なものもあるが、どちらかというと厳しいものが目立つ。今年の大阪マラソンで女子選手同士が接触し、転倒した際、倒した選手に対する非難が殺到し、SNSが荒れた。
「あなたはどう思うんですか」って聞いたんです
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「選手の接触、転倒は、よくあること。わざわざ、そこで自分が何かを言わないといけないっていう正義感って『何なの』って思いますね」
過剰な正義感を振りかざして人を攻撃する投稿は、下門さんのSNSにも多かったが、あることをキッカケにフォロワーの反応が変わり始めた。
「いろいろ攻撃してくる人って自分に焦点が当たっていないから石を投げるんです。だから、『あなたはどう思うんですか』って聞いたんです。そうしたら『全然そういうのじゃないんで、誤解です』っていうんです。そういう人の声を聞くようになってから攻撃が減って、フォロワーさんの数が増えていきました。それまで誹謗中傷に私一人で戦っていたんですけど、『そんなに悪い人じゃないよ』って周囲の人が戦ってくれるようになったんです。もっとも、ただ死ねとか消えろとか言ってくる人は相手にしないですけど」
いまだに嫌な声が届くが、自分を大事にしてくれる人をフォローするというイメージでSNSを継続していくとツイッターのフォロワー数は、12000人になった。
ピルを飲んだんですけど、全然体に合わなくて…
引退後、女子選手にいろんな経験を伝えていきたいと語る下門さんだが、今も女性アスリートにとって切実なのは生理に関するテーマだろう。欧米では自分のパフォーマンスを高めるためにピルなど薬を飲んでコントロールするのが常識だが、日本は情報があまりオープンにされておらず、選手の対策の意識や知識がまだ足りていない。下門さんは、年齢ともにPMS(月経前症候群)が重くなるなど、対応に苦慮してきた。