Number的、ウマ娘の見方BACK NUMBER
「ウマ娘になぜ松坂大輔の名言が?」話題のアニメ新シリーズ『ROAD TO THE TOP』第1話を読み解く「アドマイヤベガのおにぎりが1個だった理由は…」
posted2023/04/20 11:00
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph by
Cygames, Inc.
ゲームやアニメといったキャラクターコンテンツビジネスの枠を超えて、競馬場でのイベントや馬産地・北海道でのキャラクター等身大パネルの設置など競馬界からも注目を集める『ウマ娘』。その魅力は、かわいいキャラクターやスポ根ストーリーなど、競馬を知らない人でも親しみやすい記号的なわかりやすさだけではない。モチーフとなった史実要素を設定やビジュアル、ストーリーなどに徹底的に落とし込んだ“史実へのこだわり”こそが、ファンを“沼”へとズブズブ引き込んでいく魅力となっている。
史実へのこだわりは、最新作『ROAD TO THE TOP』でも、これでもかというくらい盛り込まれている。第1話も目を凝らし、耳を澄ますと史実要素が浮かび上がってくるのだ。(以下、第1話のネタバレを含みます)
小回りが利かないトップロードを忠実に再現
「ウマ娘――、彼女たちは走るために生まれてきた」
まずはTVアニメ版第1期、第2期でも第1話の冒頭に流れた、おなじみのナレーションから始まる。そして舞台はレース場(競馬場)へと移り、弥生賞での最後の直線の攻防が展開。モデルとなったレースは、ナリタトップロードとアドマイヤベガの初対決の場となった1999年の弥生賞。その内容も史実通り、先に抜け出したナリタトップロードが追い込んでくるアドマイヤベガを抑えて優勝する。
特に再現度の高さを感じたのは、レース場のコンディションだ。史実同様、雨が降りしきる中でウマ娘たちが走っているのだが、バ場(『ウマ娘』で走るのは“馬”ではないので、馬場はこう表記される)はそこまで悪くないようで、走るウマ娘たちの姿も綺麗なもの。実はこの年の弥生賞は稍重発表で芝がめくれるほどのひどいぬかるみは生じておらず、重馬場を大の苦手としていたナリタトップロードが雨中でも何とか実力を発揮できた数少ないレースだったのだ。
場面は変わって、トレセン学園での朝練の光景へ。コーナーで大きく膨らんでしまうナリタトップロードを見て、トレーナーが「小回りが相変わらず苦手か……」とつぶやく。史実でも“良馬場の鬼”と評された美しいストライド走法は、その反面小回りが利かないところがあった。そんな特徴が反映されたひとコマである。