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「えっ、ワープした?」誰もが驚いたゴールドシップの皐月賞…トライアルには出ずに“GI本番で初対決”の流れを作ったのは、あのゴルシだった 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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posted2023/04/16 06:00

「えっ、ワープした?」誰もが驚いたゴールドシップの皐月賞…トライアルには出ずに“GI本番で初対決”の流れを作ったのは、あのゴルシだった<Number Web> photograph by JIJI PRESS

皐月賞の歴史の中でもファンに衝撃を与える決着となった2012年、ゴールドシップの快走。

4歳以降、さらに目立ち始めた“気性難”

 4歳時、13年の天皇賞・春で圧倒的1番人気に支持されながら5着に終わるも、つづく宝塚記念でGI4勝目をマーク。しかし、秋は京都大賞典5着、ジャパンカップ15着、ライアン・ムーアに乗り替わった有馬記念では3着と、1勝もできずに終わった。

 翌14年初戦の阪神大賞典を圧勝するも、天皇賞・春は7着。次走、横山典弘を背に宝塚記念でレース史上初の連覇を果たし、GI5勝目を挙げたころには、この馬の気性難が広く知られるようになっていた。宝塚記念のレース後、横山はこう言った。

「ちゃんと走ってくれさえすればいいと思っていました。この馬の強さはこれまでの成績を見れば説明はいらないでしょう。だから、今日は最後まで『頑張ってください』とお願いしながら乗っていました」

 6歳になった15年、天皇賞・春でGI6勝目をマーク。3連覇がかかっていた宝塚記念では、過去2年を上回る圧倒的な1番人気の支持を得ていたが、ゲート内で立ち上がり、他馬より3秒ほども出遅れ、15着に大敗した。

 須貝調教師によると、ゴールドシップは、隣の枠のトーホウジャッカルが暴れたので、それに怒って吠えたらしい。

超個性派の怪物

 そのころには「不沈艦」ではなく、「猛獣ゴルシ」という超個性派の怪物、というイメージで受け止められるようになっていた。

 能力の高さは競馬史に残るレベルであったことは間違いなかったが、気性の激しさもまた、競馬史に残る凄まじさだったのだ。

 注目される存在だっただけに、須貝調教師の苦労は絶えず、ストレスで円形脱毛症になったこともあったという。

「自分が調教師である限り、シップはずっと一緒にいて、何かを教えてくれる存在なんです」

 そう言って目を潤ませた須貝調教師を、トップトレーナーへと押し上げた名馬だった。

 そんなゴールドシップの産駒が、今年の皐月賞にも出ている。

 新馬戦、若駒ステークスと2戦2勝でここに来たマイネルラウレアだ。勝って史上20頭目の無敗の皐月賞馬となるか。

 平成、令和の無敗の皐月賞馬は、トウカイテイオー、ミホノブルボン、アグネスタキオン、ディープインパクト、サートゥルナーリア、コントレイル、エフフォーリアと、名馬がズラリ。

 その意味でも、ほかの2頭の無敗馬――ソールオリエンス、ベラジオオペラと合わせて注目したい。

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