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大学野球PRESSBACK NUMBER
「将来は宇宙開発の仕事を…」“JAXA志望”だった東大キャプテンが決断した“意外すぎる選択”「東大で一番やりたかったのは野球」
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph byShinichi Uehara
posted2023/04/11 17:01
病気療養中の井手監督のためにも、春季リーグで奮起を誓った東大・梅林浩大(4年)
「大学で一番やりたかったのは野球だったからです。先輩に話を聞くと航空宇宙工学科は実験も多く、練習時間がなくなると……野球は東大野球部員である今しか、本気でできないので。もっとも、宇宙関係の仕事をしたい気持ちに変わりはなく、研究職ではなくても他の選択肢はあります。卒業後は世の中に宇宙開発事業を伝える仕事をしたいと考えてます」
それにしても「東大入学」と「甲子園出場」という2つの難関を突破し、その先には「宇宙」を見据えている男はなぜ、ここまで野球に取りつかれているのか?
「東大の野球部員というのが大きいと思います。東大は東京六大学のなかでは異質の存在で、実力は高くないかもしれません。ですが、決して強くないだけのチームではなく、どうすれば勝てるかを常に自分たちで突き詰めていて、それが結果につながれば多くの人から注目してもらえます。大きな影響を与えることもできる。そういうチームは東大だけですから」
東大が2021年春のリーグ戦で連敗を「64」でストップした時も、昨秋2季ぶりに勝利をおさめた時も社会的なトピックスになった。東大野球部が勝てば、大きなニュースになるのだ。
それはつまり、世の中の多くの人が東大野球部に関心があるからであり、最難関の大学がレベル差のある「プロ予備軍」と戦っていることを頭のどこかで認識している証でもあろう。中学時代に図書室で感じた広大な宇宙へのロマン。梅林にとって東大で勝利を目指すことも1つのロマンなのかもしれない。
刺激になった同級生・村松の姿
そんな梅林はもう1つ肩書きを加える。学年ミーティングで立候補し、今季からチームを束ねる主将になったのだ。主将は小学生時代から通じて初めての経験だが、戸惑いはないという。
「去年、明大で主将だった村松の姿を見ていたからです。静高では主将でなく、主将タイプにも映らなかった村松のリーダーシップや主将としての頑張りは参考にさせてもらっています。立場は人を変えると言いますが、僕も変わりました。チームを良くするにはどうすればいいかを真っ先に考えるようになりましたし、これから先の東大野球部についても頭をめぐらすようになりました。この1年が次の世代にもつながることを踏まえて行動しなければ、と思ってます」
東大は昨年、秋のリーグ戦で2季ぶりに白星を挙げた。しかし勝ち点奪取はならず、50季連続で最下位となった。まずは最下位脱出を目指す春のリーグ戦。むろん、目標は最下位脱出ではなく、優勝とするのは言うまでもない。
現在病気療養中で、春のリーグ戦は指揮が執れない井手監督のためにも、梅林は主将として、4番としてチームをけん引していく。