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あの“ペッパーミル騒動”なぜ賛否が割れた? 東北・佐藤洋監督「初めての甲子園で思ったのは…」「ぜひ議論に」本当の問題点を考える
posted2023/04/11 11:01
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
高校野球は「スポーツ」になりえない――。
今春のセンバツ甲子園で起こった”ペッパーミル騒動”を知った際、あらためてそう感じた。
賛否両論が渦巻いた“あの騒動”
声出し応援が解禁になったセンバツの開幕戦。12年ぶりに出場した東北高は山梨学院戦の1回表、先頭の金子和志が遊撃エラーで出塁すると、ベース上でペッパーミルパフォーマンスを披露した。
ペッパーミルパフォーマンスとは、3大会ぶりに世界一になったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)選手や大谷翔平(エンゼルス)選手ら、日本代表選手たちが出塁した際に、塁上で胡椒を挽く仕草をして喜びを表現するパフォーマンス。
それを東北高が甲子園で真似てやったところ、1回表の攻撃終了後に、一塁塁審が東北ベンチにきて厳重注意。「パフォーマンスは控えるように」と釘を刺した。そして、試合後に東北高の佐藤洋監督が「何がいけないのか聞きたい」と語ったこともあり、賛否両論が渦巻く大騒動となった。
“エラーで出塁時だから”が注意の理由ではなかった
反対意見の多くは、東北の打者が“ヒットではなくエラーで”出塁時に行った点を指摘していた。つまり、相手のミスでのパフォーマンスに「配慮がない」という意見が噴出したのだった。
しかし、この意見には少し誤解がある。なぜなら、のちに日本高野連が発表した見解には「エラーへの配慮」という文言はなかったからである。以下が、日本高野連の声明文だ。
<高校野球としては、不要なパフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようお願いしてきました。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしいというのが当連盟の考え方です>(原文ママ)
つまり一塁塁審が厳重注意した理由は、エラー出塁時か否かが問題ではなく「パフォーマンスをしたこと」そのものにあった。
ここで視点を変えてみる。賛否が渦巻くこの問題の根本にあるものは何か? それはスポーツを本来の「スポーツ」と捉えるのか、あるいは「教育のツール」とみるかの違いではないだろうか。