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那須川天心“デビュー戦判定勝ち”のウラにあった陣営の思惑とは?「まずはもらわないこと」KOならずも“文句なしの初陣”といえる理由 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2023/04/09 17:02

那須川天心“デビュー戦判定勝ち”のウラにあった陣営の思惑とは?「まずはもらわないこと」KOならずも“文句なしの初陣”といえる理由<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

4月8日、有明アリーナでプロボクサーとしてデビューした那須川天心。日本バンタム級2位の与那覇勇気を相手に判定3-0で初陣を飾った

「圧倒しながらもKOできず」をどう見るべきか

 エンターテイナーでもある格闘家には「魅せたい」という気持ちもあった。いきなりアッパーを大きく空振りしたり、ジャンプしてフックを打ち込んだりしたのはそういった心の表れだろう。それでもこの日は陣営の指示通りリスクを冒さず、好打を重ねて6ラウンドを戦い抜いた。ジャッジはフルマークの60-53が2人、59-55が1人というからスコアも危なげない。最後まで食らいついた与那覇は「天心選手の引き立て役になってしまった。悔しいというか情けない」と肩を落とすしかなかった。

 少なからずクリーンヒットを決めながら与那覇に踏ん張られ、「ノックアウトできなかった」という印象を持ったファンもいるかもしれない。これについて本田会長は「今日はとにかく動くこと、右に回ろう、右に回ろうとしていたからパンチに体重がどうしても乗らない。(逆に言えば)だからもらわずに済んだ」と説明。「警戒しすぎたのはあった」とは那須川の弁だ。気合十分の与那覇が打たれ強かったことも要因の一つと考えられる。

 こうして那須川は文句なしのデビュー戦を終えたのである。

「日本人選手と試合をすることで覚悟を見せたかった」

 そもそもデビュー前からこれだけ知名度が高く、注目を集める“鳴り物入り”の選手をうまくデビューさせるのは簡単なことではない。マッチメークにしても、プロモーションにしても、他のルーキーと同じようにはいかない。

 マッチメークで言えば、絶対に勝利が求められる中、「弱い」とはっきり分かるような相手を選んではファンのひんしゅくを買う。“特別待遇”になりがちなスター選手へのやっかみもある。那須川本人もそのあたりはかなり意識していた。

「みんなデビュー戦は外国人選手とやると思ったと思う。(絶対にあきらめない)日本人選手と試合をすることで僕の覚悟を見せたかった。今日は日本2位の選手と戦ってダウンを取って勝った。やるじゃんと思ってもらえたと思う」

【次ページ】 本田会長の期待「次の試合はまったく別の天心に」

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