濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
再試合は「するか、バーカ!」ジュリアvs雪妃真矢の“荒れに荒れたスターダム王座戦”は何を残したか?“嫌い同士の両想い”2人が語った本音
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2023/03/31 17:00
雪妃真矢との王座戦はドロー防衛となったジュリア
雪妃が見せた「泥臭さ」
タイトル挑戦を決意すると同時に、雪妃は「見たくなかった過去」に踏み込んだ。調印式ではジュリアがチャンピオンであることについて「人を傷つけてベルトを掴んだ」と批判している。ジュリアが誰にも言わずにアイスリボンを離れ、スターダムに移籍した“裏切り”を責めたのだ。
「やっぱり向き合わなきゃいけないなって。やると決めたからにはベルトを獲りますよ。ジュリアは“スターダムから出て行ってもらう”と言ってましたけど、チャンピオンになって居座ってやろうかって(笑)」
ジュリアに対する気持ちを吐き出したことで、同じ気持ちでいた人間がたくさんいると知った。その人たちの思いも背負って闘おうと思った。
「私は感情にストッパーがかかりがちな人間なんですけど、今日はそれが外れたのかもしれない」
スターダム参戦が発表された日、雪妃にインタビューをした。スターダムのファンに何を見せたいか。そう聞くと彼女は「泥臭さ」と答えた。
「華やかさ? たぶん違います。スターダムの選手はみんな華やかですしね。その中で私は泥臭さを見せたい」
ジュリア戦は、まさにその言葉通りの試合だったのではないか。また雪妃は、過去にこだわっても仕方ないと思っていた。しかし試合を終えてみると「ジュリア選手に関わらないようにとか、スターダムに触れないようにと意固地になっていた自分が一番、過去にこだわっていたのかもしれない」と感じた。
“嫌い同士の両想い”
スターダムにとっての“外敵”としてヒールのように振る舞った部分もあるのだが「正直そこは何が正解か分からなかったです」と言う。実際、雪妃の言葉に対して即座にブーイングが飛ぶような状況ではなかった。リーグ戦を通じて、雪妃が持つ華と“怖さ”のある闘いぶりはスターダムのファンを魅了していたと言っていい。
「これからも“嫌い同士の両想い”でいましょう」
試合後の雪妃は言った。ジュリアのプロレスに対する真摯さ、リスクを厭わずチャレンジできる精神力に関しては、以前から認めていた。嫌いだけど認め合う。そんな関係もプロレスではあり得る。
今後のスターダム参戦に関しては白紙。しかし2人が持つ魅力からすると、いずれ今回とは違う形での“再会”も期待したくなる。
「同じ業界にいて、盛り上げようという気持ちもきっと同じ。きっとまた出会ってしまうでしょう」(雪妃)
一時はマッチメイクそのものが危ぶまれた試合は、緊張感を保ったままギリギリのところで“成立”した。ジュリアも雪妃も「リアル」を恐れなかったからだ。