「僕がスケートをやっていく上で求めているのは、結果以上に、自分が自分の演技を見返したときに『良いな』と思える演技をしたいということ。この2年間、ジャンプは上手くなったけれど、スケーターとして良い演技かと考えると『うん』とは思えません。ただ、どんな内容でも、この結果というものが、僕を支えてくださった人への恩返しになると思っています」

　これまで通りの「勝敗よりも、演技の内容」という精神はありつつも、恩返しのために結果も求める。王者として、そして連覇を期待される立場として、たどり着いた境地を明かした。

ただひとり300点を超える演技で世界選手権2連覇を果たした　©︎Asami Enomoto

会見の場で伝えた恋人・本田真凛への感謝

　会見では、怪我を抱えながらも優勝できた要因を問われ、彼らしい発言をした。

「過去にも怪我や状態が悪いまま試合に臨むことはありました。昔は家族が近くで支えてくれたり、今は（本田）真凜だったり、ステファン、出水先生、マネージャーの方とか、みなさんの力があって今があると思います」

　日本では、恋人への感謝を公の場で伝えるというのは珍しい。ただ、宇野の場合は、感謝を伝えるためにその存在を表に出す、というのは一貫した主義でもある。普通ならばテレビに映らないトレーナーを、北京五輪以降、キス＆クライに呼んでいるのも、同じ理由からだ。当時こう話していた。

「トレーナー業って、本来なら一度も（公の場面に）顔をだすことがない。団体戦のリンクサイドに立ってもらったことで、普段支えてくださってる方が見られたことが嬉しかった」

　恋人の名を挙げたのも、自身のモットーに従ったということ。そこがまた、彼らしさだった。

　連覇を決めた宇野に、ランビエルコーチはこう伝えた。

「君は真の王者だ。連覇とは、真の強さを示したということ。次は僕を超えていってほしい」

　05、06年を連覇したランビエルコーチだからこそ寄り添うことができた、連覇という重圧、そして栄光。日本勢初の3連覇に向け、宇野は皆のサポートを受け止めるスタイルで、次なる一歩を記していく。

©︎Asami Enomoto

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