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WBC米国代表も驚いた大谷翔平の二刀流…2年前の球宴で語った「冗談かと思ったよ」「この男はどうやって明日投げるつもりだろう?」 

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ブラッド・レフトン

ブラッド・レフトンBrad Lefton

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photograph byGetty Images

posted2023/04/02 17:00

WBC米国代表も驚いた大谷翔平の二刀流…2年前の球宴で語った「冗談かと思ったよ」「この男はどうやって明日投げるつもりだろう?」<Number Web> photograph by Getty Images

2021年のMLBオールスターのホームランダービーに出場した大谷翔平。キャッチャーは水原一平通訳が務めた

 ダービーの激闘から一夜明け、大谷は予定通り先発のマウンドに上がると、ナ・リーグの1番タティスJr.を左飛、2番マックス・マンシー(ドジャース)を二ゴロと、わずか8球で強打者2人を封じた。その次の打者が、3番・三塁のアレナドだった。

 初球は99.5マイル(約160km)のストレートを見送り、カウント1-2からの4球目、アレナドがファウルにしたストレートは100.2マイル(約161km)を記録した。結果として、この1球はこの日両チームから出場した19人の投手の中で最速だった。そして、次の5球目は再び99.7マイルのストレート。今季、公式戦で大谷のストレートの平均速度は95.4マイル(約154km)だというのに、このアレナドの1打席だけで3球も平均より4〜5マイル速い球を投げ込んだのだ。そしてアレナドは6球目、スプリットで遊ゴロに仕留められた。

「冗談かと思ったよ」とアレナドは苦笑いする。前日のダービーで疲労困憊なはずの大谷は充分に、そして驚くほどのエネルギーを保っていたのだ。

「大変な打席だった。球が速いし、大谷のモーションは、身体全体でこちらに飛びかかってくる感じなんだ。だから一層難しかった。1、2番を抑えたら、僕が最後の打者になるから、ギアを上げて凄い球を投げてくるだろうと覚悟していたけど……それにしてもタフな打席だった」

 「ショウはショーのスターだった。確実にMVPだろう」

 呆れたような表情を見せながら、アレナドが続ける。

「ファンと同じように、僕ら選手も大谷のオールスター出場をとても楽しみにしていた。前代未聞の活躍だから、やっぱりファンだろうと、選手だろうと、誰もが大谷の二刀流を見たかったんだ。そして彼は期待を裏切らなかった。ホームランダービーでガンガンスタンドに叩きこんで、翌日に1番・投手だ。ショウ(大谷)はショーのスターだった。今シーズン、確実にアメリカン・リーグのMVPだろうね。ブラディ(ブラディミール・ゲレーロJr.)もすごい活躍をしているけど、大谷は投打両方でとんでもない活躍をしているんだから、大谷が選ばれるべきだよ」

 実はアレナドの打席で、もう一つの感動的な場面があった。昨季までアレナドはロッキーズ一筋で8年間プレーしており、今季の球宴を主催した地元コロラドのファンに愛されたヒーローだった。オールスターに詰めかけた4万9184人のファンは二刀流だけでなく、フランチャイズヒーローの帰還も楽しみにしていたのだ。アレナドが打席に立ったとき、満員のスタンドからは大声援が沸き上がった。彼がヘルメットを取り、その声援に応えているとき、大谷はプレートを外し、ファンからの鳴りやまないスタンディングオベーションを止めるようなことはしなかった。はるばる日本から来て、27歳で初めての球宴にもかかわらず。そんな大谷の礼儀や気遣いをアレナドも見逃さなかったはずだ。

【次ページ】 「当時はメジャーで二刀流という発想すらなかった」

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