濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「見に来なくなったファンも…」プロレスとエンタメの狭間で“闘う女優”は何を見せる? 青野未来の葛藤「ヌルいことをやっていると思われたくない」
posted2023/02/17 11:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
今の女子プロレス界で“元アクトレスガールズ”たちは欠かせない存在になっている。
スターダム屈指の人気選手である中野たむやなつぽい、ひめか。フリーでアイスリボンのシングルベルトを巻く安納サオリ。アクトレスガールズでデビューした女子レスラーは多く、各団体で活躍している。
スターダムで開催中の6人タッグのリーグ戦「トライアングル・ダービー」では、エントリー14チーム中7チームにアクトレスガールズ出身のメンバーがいる。1月に行なわれたフューチャー・オブ・スターダム選手権では、壮麗亜美に桜井まいが挑戦。両者ともアクトレスガールズをやめてスターダム入りした選手だ。
“女優によるプロレス”を謳い、演劇を中心に芸能界からのスカウトを展開してきたアクトレスガールズ。ほとんどの選手はプロレスを知らない状態で誘われ、試合を見たり練習したりする中で“闘うこと”と“魅せること”を両立させる特異なジャンルに惹かれていく。そうして「役者の道よりもプロレスに集中したい」、「プロレスラーとして上に行きたい」という思いを抱き、フリーになったり他団体に移籍する。人材の宝庫は、同時に人材流出が避けられない体制でもあった。
「もともと演劇、芸能の仕事をやっていたから、みんな“見てほしい”とか“売れたい”という気持ちが強いんだと思います。その気持ちがプロレスに向かった時に凄い武器になるんだなって。自己プロデュースを考えるし、人前に出る経験を積んでいるからリングでも舞台度胸があるんですよ」
そう語るのは青野未来。「芸能界での武器になれば」とプロレスを始めた彼女は今もアクトレスガールズに所属している。“残留メンバー”という言い方をされる時もある。
それでも青野が“残留”を選んだ理由
一昨年いっぱいで、アクトレスガールズはプロレス団体としての活動をやめた。「プロレスを用いたよりエンターテインメント性の高い公演」に移行するためだ。そのことが選手の大量離脱を招いた。アクトレスガールズでプロレスが好きになりプロレスラーとして活躍したいと思うようになった選手たちは、所属する意味を失ってしまったのだ。その気持ちは青野もよく分かるという。だが彼女は“残留”を選んだ。
「アクトレスガールズにいたいという気持ちが強かったです。ここで輝きたいって。私はアクトレスガールズじゃなかったらプロレスをやってなかった人間なので。一番は団体への愛着ですね。それにプロレスだけじゃなくお芝居もしたかった。アクトレスガールズの演劇公演もありますし」