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[証言で辿るデビューイヤー]1998年、ミラクルな第一歩 原博実/野々村芳和/岡野雅行
posted2023/02/16 09:05
text by
河野正Tadashi Kawano
photograph by
Tatsuya Nakayama
1月28日の新入団会見で初々しい表情を見せていたスーパールーキーは、期待以上のプレーですぐさまレッズの中軸に成長。アンダー世代のみならずフル代表でも日の丸を背負って檜舞台に立った。当時の番記者が、関係者の証言とともに激動の1年を見つめ直した。
25年も前の出来事だというのに、原博実はその日のことを鮮明に記憶していた。
「僕が指示したわけでもないのに、伸二に預けるとパスがどんどん出てくるもんだから、自然とボールが集まったね。噂は聞いていたし、ビデオも見ていたけど、実際に見たら度肝を抜かれたよ」
1998年2月11日、浦和レッズの監督に就任して間もなかった原は、初めて見る才気煥発な18歳のプレーに胸を躍らせた。主人公は静岡の名門、清水商業高校から加入した小野伸二だった。Jリーグの複数のクラブが争奪戦を展開し、清水エスパルス入りが有力視されたが、獲得へ粉骨砕身した横山謙三GMと宮崎義正スカウトの労が実って浦和へやってきた。
千葉・市立船橋高校との練習試合が実戦形式でのお披露目とあって、浦和の練習場には次々とファンが参集し、報道陣も50人余りが詰め掛けた。30分の試合を3本実施し、小野は2本目と3本目にトップ下で出場した。
変幻自在のドリブラー永井雄一郎、韋駄天の大柴健二というFWに柔らかいパスを何度も通し、28分に右足アウトで堀孝史に届けたスルーパスは、非凡な才能を示していた。ボールには38回も触れた。若手主体で編成した3本目のボールタッチは23回に減ったが、桜井直人のパスから左足シュートを決めている。