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「それだけ女心がわかるならモテモテじゃないですか」不破聖衣来を指導する拓大・五十嵐監督が実戦する”1対1”の駅伝マネジメントとは?
text by
藤井みさMisa Fujii
photograph byAsami Enomoto
posted2023/02/14 11:30
不破聖衣来という大きな才能と向き合う拓殖大女子陸上部の五十嵐利治監督(左)
新4年生の覚悟次第では、今年の飛躍も
振り返ると、不破が入学してきた年は上級生の中に「彼女は彼女、私達は私達」と考える選手が多く、不破たちの学年との温度差があったという。2023年の新4年生たちには「これをやらなければいけない」とはわかっていたが、それをやりきる意識がなかったと五十嵐監督は言う。しかし結局彼女たちも、間違いに気づけたという。
「今回キャプテンを決める時も、新3年の門脇奈穂にしました。当然新4年生たちは自分たちの学年から出したいと言ってきたんですが、『お前たちはまだ口だけだから、本当に心を入れ替えると言ってもまだ信用できない。ここはシビアな問題だから、任せることはできない』と伝えたんです」
そう伝えても新4年生たちは「本当に心を入れ替えてやります」と直訴してきた。五十嵐監督は彼女たちに「それぐらいの覚悟があるんだったら、肩書は関係ない。一人ひとりがキャプテンだと思って、後輩たちを指導するぐらいの気持ちでやってみろ」と伝えたという。
「もしそれで彼女たちが本当に覚悟を決めてできるんだったら、うちは今年ドーンと行けるだろうし、来年、本当に優勝を目指せる年にしていけるんじゃないかなって思います」
大学女子長距離界において、全日本、富士山の両駅伝で5年連続2冠を続ける名城大学の壁は限りなく高い。毎年力のある選手も入部し、選手層も厚く、盤石にも思える。だが、どんなに強い選手がたくさん集まっていたとしても、全日本で走れるのは6人だ、と五十嵐監督は言う。
不破聖衣来という飛び抜けた選手に加え、他の5人をどう強化していくかがポイントとなる。1学年にエースを1人ずつ作り、さらに全体の底上げをできたら……。
「全日本より、富士山のほうが可能性があるかもしれないです。今回、アンカーの新井が区間2位で、聖衣来も10km区間の5区を走って区間賞を取れる力がある。5区で1分半ぐらい差をつけられたら、いけるかもって思いますよね」
大エース・不破聖衣来の存在を活かし、選手たちは大きな成長を迎えようとしている。練習前のストレッチから笑顔が絶えないチームに、良い循環が起きていることは間違いない。ホスト顔負けのコミュニケーションで選手の心をつかむ五十嵐監督と選手たちは、杜の都と富士山でどんな戦いを見せてくれるのか。秋の駅伝シーズンが今から楽しみとなった。
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