「今は、モテないように太ってるんですよ（笑）」

不破聖衣来に頼らないチームづくりを

　拓殖大学は一昨年、全日本大学女子駅伝で3位、富士山女子駅伝では6位と、創部以来最高の成績を残したが、それは不破1人の活躍があっての上位入賞だと五十嵐監督は考えていた。

「21年の全日本は聖衣来以外の選手は区間1桁が１人、しかも区間9位でした。チームとしての総合力としての3位かというと、違うよねと。だから2022年度の目標はチーム力をあげて3位に入ること。結果的に全日本大学女子駅伝では5位でしたが、聖衣来以外の4区間で区間1桁、しかも全員6位以内だったので、しっかりとチームとしての成長が見られたと思います」

2022年10月の全日本大学女子駅伝に出場した拓殖大のメンバー　©︎JIJI PRESS

　12月の富士山女子駅伝では、不破が「走れないことはない」という状態ではあったため、起用するという選択肢ももちろんあった。しかし不破の今後を考えると、無理してここでレースに出したくはない。なによりチームの成長のために、不破抜きで戦うことも重要だと五十嵐監督は考えていた。結果的に関西大学と同タイム、胸の差で入賞を逃し9位となったが、その結果についても五十嵐監督は意に介していない。

「チームの結果だけを考えたら、『なんで走らせないの』と思われると思います。“たられば”になりますが、聖衣来が走っていたら、区間賞を取れただろうし、今年は2位以下が混戦だったので、あわよくば2位に食い込む、ということもあったかもしれません。でも2位で満足してしまっては意味がない。そのさらに上に名城大学という雲の上の存在がありますから。最終的に名城大に勝ちたいので」

　今回2番になった、3番になったと喜ぶよりも、先を見すえて強化する期間だと割り切っている。成績的には目標は達成できなかったかもしれないが、2年後、不破たちが4年生の学年になった時に優勝を目指すためには、あくまで今は通過点だと考えている。

©︎Asami Enomoto

　不破の同級生である2年生や1年生が、「私達が頑張れば、聖衣来ちゃんを楽にさせてあげられるんじゃないか」という思いで練習に取り組み始めたことも大きい。

「聖衣来を外した時にメンバーに入った選手たちが『彼女がいたらもっと良かったのに』と思うか、『彼女抜きでも頑張ろう』と思えるのか。そこがやっぱりチームとして成長するか、成長が止まるかの分かれ目だと思います。その点、聖衣来の同級生の片桐紫音をはじめ、うちの選手たちは『聖衣来抜きでも頑張ろう』『彼女を休ませてあげよう』と一致団結してやってくれました。それが関東大学女子駅伝での2位だし、全日本でもほとんど区間6位以内で走れたという結果につながったんだと思います」

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