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「それだけ女心がわかるならモテモテじゃないですか」不破聖衣来を指導する拓大・五十嵐監督が実戦する”1対1”の駅伝マネジメントとは?
posted2023/02/14 11:30
text by
藤井みさMisa Fujii
photograph by
Asami Enomoto
「正直、女子陸上部ができた時はそんなに期待されていなかったんですよ。大学からは『10年で全日本大学女子駅伝に出られればいい』と言われていました」
2016年に拓殖大女子陸上部(当時は陸上部女子チーム)の監督に就任した当初のことを、五十嵐利治監督はそう思い返す。就任して3年目の2018年に全日本大学女子駅伝に初出場し、ルーキー不破聖衣来が快走した2021年は3位に食い込んだ。短期間で大学女子駅伝界の常連校となったチームのマネジメント術について聞いた。<全2回の2回目/#1へ>
全体ミーティングは一切しない
全日本大学女子駅伝に初出場した2018年、五十嵐監督は4月の段階で選手たちに「全日本行くから」と伝えた。同月、1500mの記録会に出た時は、ほとんどの選手が5分程度かかるという状態。しかし五十嵐監督は「できる」「いける」と言い続けた。実際に出場が決まった時にも、半信半疑だった選手たちから「何を根拠にそんな自信満々に言ってたんですか」と聞かれたという。
「個々の能力をしっかり引き出せばいけるというか……。私も『根拠』はないのですが、とにかく『今年はいける』とずっと思ってたんですよ。出場できたから学生たちも『監督がこう言ったら、本当にそうなるかも』と思ってくれるようになったところはありますね」
普段、チーム内で全体ミーティングは一切しないという。「だって、全体でミーティングしたって絶対みんな話聞かないですもん」と笑う五十嵐監督が重視しているのは、1対1でのコミュニケーションだ。
「やや語弊があるかもしれませんが、女性は一般的には、『特別扱い』が好きだと思うんです。『あの子はこうだけど、お前はこうだからすごいよな』と言われて嬉しくなって頑張ろう、と思える選手もいる。でもそれは全体のミーティングでは言えない。例えば誰かを褒めて見習ってほしいと言うと、『監督がその子を特別視している』と思われてしまう可能性もあります。でも個人対個人であれば『すごいな』とか『こういう選手になれるよ』って言ったことは漏れることはないので。対面でもLINEでも、マンツーマンでしかやってないですね」
練習メニューには走り込み、ポイント練習、筋力トレーニングなどがあるが、その内容はチームによってそこまで差があるわけではない。練習をコントロールするのは監督の力量だが、練習以外の生活態度、体重管理を行うのは選手自身だ。