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不破聖衣来が「不安もストレスもなく練習できるように」拓大・五十嵐監督の苦悩「聖衣来からはそんなにイライラする必要ないって…」
posted2023/02/14 11:29
text by
藤井みさMisa Fujii
photograph by
Asami Enomoto
「一般の方って、レースに出場していないイコール故障というイメージがあると思うんですけど、今回の富士山女子駅伝にしても、都道府県駅伝にしても、不破聖衣来は出てないけどそういうことではないんですよ」
拓殖大学女子陸上部の五十嵐利治監督は、不破が故障に苦しんだ1年だったと思いますが…とたずねるとまずそう答えてくれた。2022年度、不破が出場した公式レースは4月の個人選手権5000m、9月の日本インカレ10000m、10月の全日本大学女子駅伝の3つのみ。その意図や、突出した才能とどう向き合っているのかについて聞いた。<全2回の1回目/#2へ>
出場を迷った日本インカレと全日本
21年の12月に10000m日本歴代2位(当時)の30分45秒21をマークした不破だが、その後、度重なる故障に苦しんだ。6月以降は故障自体は治ったが、精神的な面でうまく走れなくなってしまったのだという。
「スポーツの言葉で言えば、イップスといいますか。自分の走り方がわからなくなって呼吸が上がってきてしまうとか、そういう部分が大きかったですね。その状態でレースに出させて平凡な走りをすると、本人の自信がなくなってしまうのではないかと考えました」
1年生のときの走りのインパクトが強すぎたがゆえに、今の状況で100%の力で走っていたとしても、SNSやメディアの記事に『全盛期の走りができない』とすぐに書かれてしまう状況も五十嵐監督にとっては気になっていた。
調子が上がらない中、日本インカレでは記録も勝負も狙わないようにしようと五十嵐監督と不破は話して出場したが、32分55秒31で優勝。10月の全日本大学女子駅伝も出場しないという選択肢もあったが、レースの1週間前に熊本で練習をしていた時に、突然走れるようになったため、前回と同じ5区での出場を決めた。
「ケガがどうのというよりも、聖衣来の気持ちの中で何か吹っ切れた感じがあったのかなと思います」
見事に5区で区間賞には輝いたものの、タイムは29分39秒だった。1年時の28分00秒という驚異的なタイムには届かなかった。