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「(日本の選手は)ちょっと気負い過ぎ」ダルビッシュ有36歳が現在のWBC侍ジャパンに感じた“懸念”とは? チーム合流直前に本人に聞いた話
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2023/02/09 17:00
栗山監督の信頼も厚く、侍ジャパンでは精神的支柱としてもチームを支えるダルビッシュ有
ダルビッシュ「(選手やスタッフは)ちょっと気負い過ぎ」
09年以来、3大会ぶりとなる悲願の優勝へ。その温度は日増しに高まるばかりだ。合宿、壮行試合が始まり、本番を迎えれば更にヒートアップすることは間違いない。それを見越した上でダルビッシュは最近自身が感じている“ちょっぴり気がかりなこと”を口にした。チーム最年長の36歳、09年大会の優勝を経験した男の口調は熱かった。そのまま伝える。
「温度的にというか、いろんな選手のコメントとか、スタッフであったりとかというのを見ていると、ちょっと気負い過ぎというか、戦争に行くわけじゃないですし、自分たちは好きな野球をやってきて、その中で日本人の選手の中の、この大会に勝つためのベストメンバーだと思うので、本当にオールスター中のオールスターだと思うんですね。
それなのに、みんなで気負って、体が固まって、ガチガチになって、もしアメリカで負けたとしても、それで日本へ帰れないというか、そういうマインドで行って欲しくないので。せっかくこういうチームだから。ちゃんと自分のことはしないといけないけど、練習であったりとか、ファーストベースまでしっかり走るとか、そういうところはちゃんとしないといけないけど、気負う必要はないということは伝えたいと思う」
栗山監督が求めていた、“リーダーとしての期待”
栗山英樹監督がダルビッシュに求めていたリーダーとしての期待が早くも遠いアメリカから発信された形だが、その思いをどのように若き侍たちへ伝えるのか。そのことを問われたダルビッシュはシンプルに答えた。
「そのまま、今、言っていることを言えばいいと思います」
昨年のポストシーズン。ダルビッシュは4試合に先発し、2勝1敗、防御率2.88の成績でエースの責務を果たした。頂上を争うハイレベルな熾烈な戦いで「負けられない」の思いは誰でも同じだろう。だが、彼はいつも同じ言葉を繰り返していた。
「他の試合と同じようにしっかり準備をして、いつも通りにやるだけかなと」
決戦が近づけば近づくほどに、メディアもファンも気持ちのこもった言葉が聞きたくなる。若い選手はそんな期待にも応えてくれることがある。だがこれまでも、百戦錬磨のベテランたちは同じ言葉を繰り返していた。