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藤井聡太五冠「▲4五歩の王手」、羽生善治九段「▲8二金」が勝負を分ける好手だったワケ…棋士視点で王将戦第2・3局振り返り 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2023/02/02 11:01

藤井聡太五冠「▲4五歩の王手」、羽生善治九段「▲8二金」が勝負を分ける好手だったワケ…棋士視点で王将戦第2・3局振り返り<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

王将戦第3局2日目の封じ手開封の瞬間。羽生善治九段に対して勝利した藤井聡太王将が2勝1敗としている

 第2図は、雁木の駒組み。銀が横に並ぶ形(上側)と、ツノ銀の形(下側)の2種がある。いずれも金銀のバランスが良く、攻守で柔軟に指せるのが特徴だ。

 なお雁木には、雁が群れで飛ぶようなギザギザの形、雪国で降雪時でも通れるように軒から庇を長く差し出した回廊風の覆い、などの意味がある。将棋の雁木の名称の由来は、私は後者だと思う。

 羽生は銀を横に並べた雁木(第2図の上側)に構えると、藤井は銀を中段に進めて先攻し、銀交換の順になった。羽生は△3五銀と飛車取りに打ち、藤井の攻めを抑えにかかった。長期戦を目指した指し方で、さらに玉を四段目に上げた。

 第3図は中盤の部分局面。

 羽生が中段玉を金銀4枚で囲った形は、「天空の楼閣」のように見える。4筋の馬から離れて脅威が薄れ、次に△3三桂と跳ねると好形だ。藤井の攻めを封じる実戦的な指し方だった。

 しかし、その構想は頓挫してしまった。第3図から3手後の藤井の▲4五歩の王手が好手で、羽生は△3三玉と引かざるをえなくなった。その後、藤井は厳しく攻め立て、羽生の玉を一気に仕留めた。王将戦第3局は、藤井の圧勝に終わった。羽生にとって、不本意な内容だった。

藤井の恐るべき「先手番22連勝」と佐賀の縁

 藤井は本局に勝ち、先手番の勝利は22連勝となった。

 プロ公式戦での先手番の勝利は統計的に5割を少し超えるが、テニスのサーブ権のように決定的なものではない。前記の記録には驚くばかりだ。ネット上では「金底の歩、岩より堅し」という将棋の格言をもじり、「先手の藤井、岩より堅し」と詠まれた。

 王将戦第4局は2月9日、10日に東京都立川市で行われる。シリーズを盛り上げるためにも、羽生にはあと1勝はしてほしいものだ。

 それを強く待ち望んでいるのが、3月中旬に第6局が予定されている佐賀県上峰町の対局場の「大幸園」である。2022年の王将戦第5局の対局場にも予定されていたが、渡辺明王将が挑戦者の藤井四冠に4連敗して実現しなかった。

 その後、藤井王将は特別な計らいをした。第5局の予定日前後に佐賀県上峰町に出向き、子ども将棋大会を視察したり祝賀会に出席するなど、地元の人たちと交流した。さらに対局場の「大幸園」を訪れ、地元の食材を使った豪華な昼食の提供を受けた。ちなみに、総料理長の名前は、藤井と1字違いの藤聡太郎さん。

 1年越しの佐賀県での王将戦の対局は、果たして行われるだろうか――。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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