Jをめぐる冒険BACK NUMBER
なぜ柿谷曜一朗はJ2徳島に移籍したのか「名古屋には申し訳ないんやけど…」 笑顔で「めちゃ楽しい」と語る“33歳の新たな挑戦”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/02/01 11:03
33歳となった柿谷曜一朗。若き日に再生した徳島ヴォルティスの一員として再び、戦いのピッチへと向かう
「まあ、あれはリップサービス的なところがあるけれど(笑)、若い選手たちが何かを感じてくれればいいし、何かを伝えることができるから。前回はJ1に昇格させられなかったし、そこにやりがいを感じてるんで、しっかりと。もちろん、優勝を狙ってやるけど、6位でも上がるチャンスはある。昇格を狙っていきたいと思います」
ソシエダで分析担当を務めた指揮官の下での新境地
リカルド・ロドリゲス、ダニエル・ポヤトスとスペイン人監督を続けて招聘し、確固たるスタイルを築いてきた徳島は今季、レアル・ソシエダで4年間、分析担当コーチを務めたベニャート・ラバイン監督を迎え入れた。
1月29日まで行われた宮崎キャンプで、柿谷はレアル・ソシエダを思わせる4-3-1-2のフォーメーションのトップ下でプレーしていた。セレッソや名古屋では最前線でプレーしてきたが、新天地では時間を作りながら決定機を演出し、中盤と前線を繋ぐリンクマンとしての役割を存分に楽しんでいた。
「これまでとは役割が全然違って、めっちゃ楽しい。後ろからビルドアップするチームに来たのは初めてというか、バーゼル(スイス)くらいしかなかった。セレッソは“いてまえ打線”みたいな感じやったし、名古屋はカウンターサッカーやったから。
このチームに来てまず驚いたのが、GKの繋ぐ意識の高さ。凄いなと思って。俺ら前の選手はポジションさえ取っておけば、ボールが出てくる。あとは、そこの質かな。質が上がってくれば、俺らが仕事をするだけやから。やっていて面白いし、その回数を増やすためには俺らがボールを奪わなあかん。奪って無理やったら下げて、もう一度作り直せばいい。若い子にとって、こういうサッカーを経験できるのは、めちゃくちゃいいことやと思う」
今、サッカーをやっていてめちゃ楽しいんですよ
もちろん、若い選手だけでなく、33歳の自身にとってもさらなる成長のチャンスだと捉えている。
「このチームの練習、めちゃくちゃきついんですよ。今までで一番っていうくらいきつい。今、ハードワークしてボールを奪い取ることが世界の基準になってるじゃないですか。だから、俺もそういう選手に変われるんじゃないかって思うし、プラス今まで自分が大事にしてきたものを合わせていけるんじゃないかと思って。今、サッカーをやっていてめちゃ楽しいんですよ。いろいろ辛いことも多かったけど、またサッカーが楽しなってきた(笑)」
背負う番号は、代名詞となった8番である。「8番じゃなくてもよかったんですけどね」と言ったが、それは柿谷なりの照れ隠しだろう。この番号へのこだわりは、言葉の端々に滲み出ている。