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「笑顔の記憶はほぼない」「最近は冗談を口に…」日本ハム移籍・田中正義の“もがき苦しんだ”6年間…現地記者の本音「期待、いや祈っていた」
posted2023/01/11 17:01
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
JIJI PRESS
海外FA権を行使してソフトバンクに移籍した近藤健介の人的補償として、日本ハムが指名したのは“未完の大器”田中正義だった。
1月11日、ソフトバンクが正式に球団発表を行い、「ホークスの皆さんには、なかなか結果が出ない僕をこれまで支えて頂き、本当に感謝しています」という田中のコメントも合わせて紹介された。
同発表を待たずに日本ハムの新庄剛志監督が「(いい選手が)俺の中では4人くらいいました。めっちゃ迷いましたよ。ビデオすり切れたもん」「大学時代から見ていたから、大学時代のように復活できるかどうか」「最初の文字が“タ”かな?」(いずれも1月10日付、スポーツニッポンより)などと語ったことで、田中が日本ハムへ移籍することは発表以前から確実視されていた。
現行のFA制度において、ソフトバンクが作成した28名のプロテクトのリストが外部に漏れることは原則あり得ない。
とはいえ“球界人事”は常にファンの興味を惹く。そのため各メディアでも様々な憶測が流れた。日本ハムの球団幹部の話として「(年俸が)高額な選手も何人かいる」と伝わったことで、過去にタイトルを獲得した実績のある選手の名前なども一部で挙がっていた。
たしかに巨大戦力を誇るソフトバンクで28人のリストを作成すれば、あっと驚くような選手がプロテクト外となっていても不思議ではない。現に、一昨季オフは又吉克樹がFA移籍した人的補償として、17年に最優秀中継ぎ賞に輝いたことのある岩嵜翔が中日に移籍している。
そういった中で、日本ハムは「田中正義」を選んだ。
ここまでプロ6年間未勝利で、一軍通算登板も34試合にとどまっている。それでも新庄監督も言うように「大学時代のように復活」さえ出来れば、今シーズンから大化けしても不思議ではない。
プロ入り前の評価「すぐに通用する」
いつか必ず、本来の姿を見せてくれるはずだ――。
ソフトバンクでも、ずっとそんな期待をさせてくれたピッチャーだった。
創価高校時代はじつは外野手。背番号8をつける4番打者だった。創価大学入学後に本格的に投手に取り組み、2年生の6月、全日本大学野球選手権の1回戦で最速154キロを記録するなど佛教大学を完封し、一躍大学球界のスター候補になった。