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「あれはスポーツではない」アーネスト・ホーストが“バラエティ化する格闘技”に鳴らす警鐘「少しだけテクニックを覚えた状態は危険」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2022/12/30 17:13
12月中旬、名古屋市内で取材に応じたアーネスト・ホースト。K-1人気を牽引した“ミスター・パーフェクト”は現在の格闘技界をどう見ているのか
故アンディ・フグは「非常に尊敬できる人だった」
ホーストと拳を交わした経験を持ちながら、先日引退したタフガイもいる。のちにUFCやボクシングでも活躍したマーク・ハントだ。ホーストは「年齢も年齢(48歳)だし、身体のこともあるので、いい引き際だったのではないか」と考える。
「私同様、ハントも旧K-1から多くのファイトマネーを得たと思う。私が30代のとき、彼は20代だったと思うけど、闘うことができて本当によかった(ホーストの1戦1勝)。もし30代に戻れるなら、もう一度彼とファイトしたい」
先のカタールW杯で日本がクロアチアと対戦することになったとき、“日本でも有名なクロアチア人”としてミルコ・クロコップが日本のテレビからインタビューを受け、現役時代は何事もハッキリ白黒をつけてきた彼らしくもなく「どっちも応援したい」とコメントしていたことは記憶に新しい。K-1時代、ミルコに3戦全勝のホーストにとっても、彼は記憶に残るファイターだった。
「闘うたびにミルコは違う戦術で挑んできた。私がいつもローキックを主体にしたコンビネーションで闘うのとは対照的にね。彼はいろいろな知恵を張りめぐらせて勝とうとするタイプでした」
もしW杯で母国オランダが日本と対戦したら、ホーストはどちらを応援するのだろうか。
「もちろんオランダを応援するよ。日本vs.クロアチアなら、日本を推すけどね(笑)」
早いもので、亡くなってから22年も経つ“鉄人”アンディ・フグとの数々の激闘もホーストにとってはよき思い出だ。
「アンディがK-1に来たとき、彼は空手家だったので、私はよく知らなかった。“極真空手の人”という感じでしたね。でも付き合っていくうちに、彼は非常に尊敬できる人であることがわかった。95年の初対決では私が勝ったけど、警戒しながら闘っていました。97年に私がK-1で初優勝したときには決勝で闘ったけど、別ブロックに彼がいることをずっと意識せざるを得なかった。アンディを一言で表現するなら、『諦めない、ガッツがある人』となるでしょうか」