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《秘蔵写真満載》バイクレースを変えた天才…写真で振り返るバレンティーノ・ロッシの情熱と革命の歴史
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/12/29 17:00
ヤマハYZR-M1を駆る2017年のバレンティーノ・ロッシ。ヤマハでの2度目の挑戦では王座に届かなかった
「ファンを魅了するパフォーマンス」2009年9月 サンマリノGP
全盛期のロッシは、優勝したレースでさまざまなパフォーマンスを披露してファンを喜ばせた。前戦インディアナポリスで「2位でも良かった」レースで転倒リタイアしたロッシは、チームメートのホルヘ・ロレンソに一気にポイント差を縮められた。だが、続くサンマリノGPでロッシは優勝し、チャンピオンを再び引き寄せた。
そんな経緯もあって、レースでは「まぬけ、のろま」を意味するロバをヘルメットに描いて、バカな転倒をしたインディアナポリスを自ら揶揄し、表彰台ではロバの耳をつけてファンを喜ばせた。いまのライダーたちが多彩なパフォーマンスを当たり前のように繰り広げるのも、ロッシというパフォーマンスの先人があってこそだ。
「シャンパンファイトの達人」2009年6月 カタルーニャGP
チームメートのホルヘ・ロレンソのホームGPであるカタルーニャで、熾烈な一騎打ちを制したロッシのシャンパンファイト。ただ、ロッシの人気はスペインでも高く、シーズンを通して、どの大会もホームGPのようだった。
雑誌、テレビなどで自分のレースを入念に研究するロッシは、シャンパンファイトも超一流。角度、向きなど、ムービーやスチールのカメラを意識したポーズをいつも見せてくれた。写真映えという点でも超一流だった。
「足出し走法の発明」2009年2月 セパンテスト
マレーシアのセパンで行われた公式テストで、バレンティーノ・ロッシは初めてブレーキングで足を出す走法を披露した。なぜ? その効果は? と話題になり、その後、ロッシ考案のブレーキング足出し走法は、ロードレース界のスタンダードになった。
足出し走法の効果は、ブレーキングの際にリアに荷重を残し、よりハードなブレーキングを実現すること。流行し始めたころにロッシは、「足を出す選手には、1回ごとに1ユーロもらおうか」と言って笑いを取った。この走法は、ロードレースの走り方を変えたもっとも大きなテクニックでもある。
「誰もが真似するパフォーマンス」2016年4月 スペインGP
2016年からMotoGPクラスのタイヤは、ミシュランの1社供給となり、パルクフェルメの路面には、順位を示したミシュランのプラカードが用意された。ロッシはスペインGPでPPを獲得したとき、鉄製の看板を引っこ抜き、写真に収まった。以来、クラス、レース、ライダーを問わず、これが恒例となった。枠にはまらない自由な発想は、ロッシならではだった。