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「オオタニは“人気者“になることを目指していない」大谷翔平の米番記者が語る現地でのリアル知名度「手のひら返しはアメリカも早い(笑)」
posted2022/12/25 11:03
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
USA TODAY Sports/Reuters/AFLO
今年7月にロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平の軌跡をまとめた書籍『SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』を日米同時発売したジェフ・フレッチャー氏。現地の番記者が知る、大谷翔平の素顔とは? (協力・通訳/タカ大丸)
――少し唐突ですが、これまで大谷選手を見てきた中で、二刀流の成功を疑ったことはありましたか。
ジェフ・フレッチャー(以下、JF) 正直なところ、「やはり難しいのでは?」と思ったことはありましたね。まず、1年目(2018年)の開幕前のスプリングトレーニングを見て。日本とはボールが違いますし、その適応に苦しんでいたのか、打つほうも投げるほうも良くなかった。この様子では、投打どちらかに絞ったとしても難しいのではないか、という疑問はおそらく90%以上の人が抱えていたと思います。
――それはいつ払拭されたのでしょうか。
JF 開幕2週間経った頃には、メディアも私自身も完全に見方が変わりました。その間、すでに投手として勝ち、打者としてもホームランを放った。それ以前の段階で、二刀流の可能性を心から信じていたのは、アメリカ中でも大谷選手自身とチームだけだったんじゃないでしょうか。
――勝手なイメージですが、アメリカは新しいものに寛容なイメージがあります。それでも二刀流はありえないという認識だったんですね。
JF アメリカ人も何か新しいものを見たいという思いはあるんですよ。でも最初(スプリングトレーニング)がさっぱりだったので、一気に無理だろうという論調になった。それが2週間で急転して……。そのあたりの“手のひら返し”はアメリカも早いんですよ(笑)。
2020年は「懐疑的な声も上がっていた」
――1年目は新人王を獲得したわけですが、19、20年は度重なる怪我に泣かされて、思うような成績を残せなかった。となると、そこでもまた懐疑的な声が上がっていたのでしょうか。
JF 怪我が続くとどうしてもそう思ってしまいますよね。やはり負担が大きすぎて、投打両方やるには体が追いつかないんじゃないかと。それに20年シーズンは投打両方の成績が振るわなかった。そうなると打撃に絞ったほうがいいのではないか、という懐疑的な声も上がりますよね。
――鮮烈デビューを飾ったとはいえ、2年間も怪我が続くとそう思いますよね。
JF ただ私は18年を間近で見て、ピッチャー大谷がいかに素晴らしいかを知っていた。だから少なくとも、もう一度チャンスは与えられるべきだと感じていました。特に20年は新型コロナウイルスによるパンデミックで開幕が遅れるなど、調整が難しかったと思うんです。だから例年通りのスケジュールで開幕したシーズンで、再度挑戦させるべきだとは考えていました。
――その期待どおり、21年の大谷選手は圧巻でした。46本塁打・100打点・26盗塁、9勝・防御率3.18・156奪三振でシーズンを完走。MVPも獲得しました。開幕前から覚醒の予感はあったんですか。