Number World Cup ExpressBACK NUMBER
7発大勝利のスペインは崖っぷちドイツとどう戦う? ルイス・エンリケ監督の選手起用は?「FWでやると死ぬほど疲れる」
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2022/11/27 11:00
若手が多いスペイン代表の象徴ともいえるガビ。18歳にして代表キャップ数はすでに14を数える
歴代の代表チームと比較しても、特に前線の運動量と献身性は顕著だ。基本的には4−3−3をベースにしている中で、フェラン・トーレス、ダニ・オルモ、マルコ・アセンシオの3枚は高い位置から連続的にプレスをかける。この強度での前線からの組織的守備は、ワールドカップを制した2010年のチームにも、それ前後のユーロ覇者となったチームにもなかったものだ。イニエスタやビジャら、当時は別のスタイルの選手が配されていたこともあるが(この類の選手はペドロくらいだった)、この点はルイス・エンリケの要求だろう。
若く走れる選手を置くという指揮官の嗜好は如実にあらわれている。スペインは、センスだけなら国内でも有数のFWイアゴ・アスパスと、ポストプレーに長けた好調のボルハ・イグレシアスも外した。センターフォワードはアルバロ・モラタだけ。マルコ・アセンシオを9番のポジションに配するなど、独自の選抜と起用を続けている。
ドイツ戦でも前から仕掛ける、激しいプレスが見られるのは間違いない。
与えられるタスクは変わらない。しかしここで難しいのは、ドイツ戦に誰が出るのか、という点だ。
出場を予想できるのは3人だけ
「このスペインは誰が出るかがまったく分からないんだ」
『マルカ』紙のスペイン代表番記者、ミゲル・アンヘル・ララは嘆いていた。
「もちろん何人かは想像がつく。特に中盤はブスケツ、ぺドリ、ガビはベースとなっているからね。でもそれ以外は、我々のように普段から追いかけている人間でもなかなか想像できない」
これはルイス・エンリケのチームマネージメントの上手さでもある。モラタやエリック・ガルシアなど、予選や強化試合で、彼が好んで起用していた(と思われる)選手もコスタリカ戦では控えだった。CFには本来ウイングのアセンシオが入り、CBには本来はアンカーのロドリが入った。
アセンシオはドイツ戦を前にこんな話をしている。
「代表での初日から、ルイス・エンリケは僕に『お前はいくつものポジションでやれる』と言っていた。『FWでやると死ぬほど疲れるからな』とも言っていたけど、たしかにそのとおり。求められるのは相手へのプレス、走ること、相手のマークを外すタイミングだ」