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「歩くのも大変な状態になって…」難病で8月末に手術、DeNA三嶋一輝32歳が明かす復活への道筋「いろんな意味で強くなって戻ってきますから」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNanae Suzuki
posted2022/11/07 11:05
国指定の難病『胸椎黄色靭帯骨化症』の診断を受け、今年8月末に手術を受けた三嶋。本人が苦闘と復活への道筋を語った
まさか背骨にダメージを負っているとは…
「ありましたけど、じつは僕は野球人生で一度も肩肘を痛めたことがなかったんですよ。これっていいことなんだろうなって思いながら今までプレーしてきたんですけど、まさか背骨にダメージを負っているとは……。原因は不明ではありますし、いろんな人に話を訊いた上での自分の勝手な憶測なんですが、肩肘に負担が掛からないからこそ体の芯である背骨に負担が蓄積してしまったんじゃないかって。でもそれって、いいフォームで、いい体の使い方だったからこそ、なってしまったのかなって思ったりもするんですよ。だから何て言うか、どちらかというともう前向きに、這い上がるしかないなって感じですよね」
淡々とした落ち着いた口調。なってしまったものは仕方がない。後ろを振り返ることなく、完全復帰することを信じて邁進している三嶋がそこにはいた。
1日もすっきりとした日はなかった
症状らしきものが顔をのぞかせたのは、沖縄・宜野湾での春季キャンプが始まる10日ほど前のことだった。
「自主練の最中に、腰がグッてずれるような感覚があったんです。仙腸関節(骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある関節)あたりですかね。それから変に力が入っちゃって、足が思うように動かなくなってしまったんですよ」
三嶋は高校時代、腰椎分離症を患っているが、それとはまた違った感覚だった。
「分離症のときは体を反らすことができなかったのですけど、今回は前屈ができなくなってしまったんです。歩いても感覚的に気持ち悪いというか……。けど投げられることは投げられるし、疲労の蓄積やフォームが悪かったり、いろんなことが原因として考えられたので、暖かい沖縄に行って動いていれば何とかなるだろうと思っていたんです」
キャンプでは開幕に向けハードなトレーニングに明け暮れた。ブルペンにも入って、しっかりと投げ込みもした。
「けど1日もすっきりとした日はなかったですね。何なんだこれはって……」
オープン戦で計6試合を投げ、防御率0.00だったが…
キャンプが終わって3月になり病院へ行き、ヘルニアなどの可能性も含めMRIなどで精密検査をしてもらうも、結局原因はわからずじまい。一方で不安を抱えながらも三嶋はオープン戦で山﨑康晃と守護神争いを展開し、計6試合を投げ、防御率0.00という好成績を挙げた。時期を考えてみても順調そのもののように感じられた。