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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「高津監督も高校時代は控え投手だし」「だって月謝は同じなのに…」広澤克実60歳が“肩ひじを守る少年野球リーグ理事長”になったワケ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2022/11/02 17:25
広澤克実さんに少年野球「ポニーリーグ」の理事長就任の経緯を聞いた
「最近よく思うのは、同じ月謝払っていて、いっぱい試合に出られる人と、試合に出られない人を作るのは、この時代に合ってないなと言うことです。だって、月謝は同じなんですよ。だったら同じだけチャンスを与えないと。
僕は、多くの親はわが子を強くしたいから、ポニーなんかには入れないのかなと思っていた。でも、必ずしもそうでもない。大事なのは理念であり、組織の在り方ですね。ポニーは上手な子もそうでない子も野球に興味を持ってもらって、才能を伸ばすリーグだと言うことをアピールしていかなくては。僕はスピーカーとしてそういうことを話すのが役割だと思っています」
今思えば、中学時代に肘がピシッといったんですよ
今年5月、ポニーリーグは少年野球団体として初めて、大規模な「野球肘検診」を実施した。
ポニーリーグには野球肘障害の権威である古島弘三医師(慶友整形外科病院副院長、整形外科部長)も常務理事として加わっている。古島医師の陣頭指揮で、多くの野球少年がエコーや触診の検査を受けた。広澤氏は自身の経験談と照らし合わせてこう語る。
「僕は中学時代、捕手と投手を掛け持ちしていました。今思えば、肩肘にとって最悪のパターンですが、肩が強かったものですから、ばんばん投げていた。でも、あるときに肘がピシっといったんですよ。それから痛くて、中学時代ずっと痛かったですね。
古島先生に話を伺って、これが野球肘(OCD=離断性骨軟骨炎)なんだなと思いました。高校時代もそのまま投げていて、でも最後には肩を壊して投げられなくなった。古島先生のような方がいて、アドバイスを受けることができていたら、将来は違っていただろうと思いますね」
肘検診にとどまらず、少年野球の環境には変化が起きている。
今年の8月、独立リーグ栃木ゴールデンブレーブスを運営するエイジェックグループが、ボーイズリーグ、リトルシニア、ヤングリーグ、ポニーリーグ、フレッシュリーグの少年野球主要5団体を支援すると発表し、さらに、5団体の統一チャンピオンを決める「エイジェックチャンピオンシップ(仮称:中学硬式野球5団体日本一決定戦)」の設立も発表した。この記者会見に広澤氏はポニーリーグ代表として出席した。
「野球界ではプロとアマチュアには垣根があると言います。柳川事件(1961年社会人野球日本生命の外野手柳川福三が中日に強引に引き抜かれた事件。以後、プロアマの断絶が長く続いた)以来、プロ選手がアマ選手と交流することが一切できなくなった。
でも、ポニーリーグに入ってみて、例えばボーイズ、シニア、ヤングリーグなどとポニーの壁はそれ以上に高いんじゃないかと思った。同世代の同じ硬式野球をする仲間なのに、練習試合でも連盟に届け出がいる。届けなければ大変な問題になる」
少年野球を取り巻く環境を憂慮しながら、広澤氏はこのように続ける。