濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「プレッシャーも凄かったはず」フワちゃんデビュー戦で見えた“プロレスへの本気度”…師匠が明かす舞台裏「100点満点。努力の成果です」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/10/24 17:01
10月23日、スターダムにてデビュー戦を迎えたフワちゃん
殴られ蹴られ…そこからが本当の“本番”だった
10月23日、アリーナ立川立飛大会。『行列』のカメラが入り、くりぃむしちゅーの有田哲平が解説席に座ってのデビュー戦。フワちゃんは師匠である葉月と組み、上谷沙弥&妃南と対戦した。
筆者のフワちゃんに対する印象は、短時間で2度変わった。まずは笑顔での堂々とした入場に目を奪われる。これはかなりキモが据わってるんじゃないのか、と。
ただ試合が始まると、当たり前だが劣勢が続く。葉月からのタッチを受け相手と向き合うと殴られ蹴られ、あっという間に息が上がった。まあそうなるよな、といったところ。練習と本番は違う。
なんとか自軍コーナーに戻って葉月とタッチ。そしてここからが本当の“本番”だった。息を整えると積極的に声を出して葉月を後押し。試合が進むにつれて動きもよくなってきた。驚いたのはドロップキックの高さと精度が、序盤よりも(疲れがあるはずの)後半にきて上がっていたことだ。さらに逆エビ固め、ボディスラムも見せる。思い出したのは以前、葉月から聞いた言葉だ。
「ドロップキック、(ボディ)スラム、逆エビ固め。新人が使う技ってそれくらいじゃないですか。それを大事にしなきゃいけないし、キャリアを積んでもそれは一緒。技の数が多ければいいというわけではないですし」
まさにこの3つの技を、フワちゃんはしっかりと自分のものにしていた。エルボーにも気迫がこもる。その上でブレーンバスター、卍固めといった“大技”も。基本的な技をしっかり練習してきたことが示せていたから「ああ、“見せる用”に派手な技だけ教わったんだな」とならなかった。
ただの「芸能人ゲスト」ではなかった、という証明
最後は3カウントを奪われた。それは仕方のないことだ。むしろ“お客さん扱い”されなかったのだと言える。フィニッシュは上谷のファイヤーバード・スプラッシュ。“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王者の必殺技の一つだ。
これは言ってみれば“デビュー祝い”の一発だろう。とはいえコーナー最上段から対戦相手が回転しながら降ってくるわけで、受けるにはそれなり以上の頑丈さが必要だ。上谷はフワちゃんの体、その耐性を試合の中で確かめたからこそ、必殺技を出したのではないか。新人相手のフィニッシュといえば逆エビ固めが定番だが、フワちゃんは上谷の逆エビを必死に耐え、ロープエスケープに成功している。
「100点満点のデビュー戦だったと思います」
そう語ったのは葉月。特によかったのは“受け”だそうだ。
「プロレスは“受け”の競技なので。攻めることはできても、受ける時に逃げてしまうことがよくあるんです」
葉月は選手としてもコーチとしても基礎を大事にする。彼女が指導する練習では、受身に費やす時間が半分以上にもなるそうだ。その葉月が合格点を出した。技をしっかり受けたということは、つまり技を見せるだけ、攻撃するだけの“芸能人ゲスト”ではなかったということだ。変に逃げ腰にならないほうがケガをしないし、綺麗に、ダイナミックに技を受けることで迫力が観客に伝わりやすくもなる。