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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「盛大な姉妹喧嘩」に因縁のライバル戦…スターダム・リーグ戦優勝のジュリアが語った決意「私が赤のチャンピオンになる」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byShigeki Yamamoto
posted2022/10/25 17:28
5★STAR GPで優勝を果たしたジュリア。数々のドラマティックな試合を制しての戴冠だった
鈴季すずとの「盛大な姉妹喧嘩(笑)」
キッド戦で白星先行となったジュリアは、そのまま勝ち点を積み上げていく。終盤は9月23日から25日の3連休で3連戦。25日はリーグ戦ではなくハードコアルールに挑んだ。大会内の企画であるマッスルコンテストのために、若干ではあるが減量もしたそうだ。その6日後、10月1日の決勝大会では、リーグ公式戦最後の1試合と決勝戦を闘った。
「最後は限界を超えてましたね。決勝はもう気力だけ(笑)」
そんな状況を乗り越えることができたのも、相手が特別だったからだろう。最終公式戦で当たったのは鈴季すず。ジュリアがデビューしたアイスリボンの後輩だ。ジュリアが2019年10月に退団するまでは、常に一緒だった。
「寮の同じ部屋に住んで、一緒に(団体事務所に)出勤して、一緒に練習して、一緒に帰って。自分の中では家族、お姉ちゃんでした」
ジュリアが退団した時、すずはそう語っている。そしてジュリアのいないアイスリボンで“姉”の不在を埋めるようにすずは成長した。翌年夏、17歳でシングル王者に。今年からはフリーとなり、スターダムに乗り込んできた。もちろんジュリアとの闘いを求めてのことだ。無言でいなくなったジュリアへの怒りと恨みが原動力だった。
「怒ってましたね、すずは。でも私にとってのすずはずっと変わらない、愛おしくてたまらない存在です。すずにどれだけ恨まれても憎まれても、私にはそういう感情がまったく湧かない。すずには何をされても何を言われても、全部受け止めようと思ってました」
リングで向かい合いながら、2人とも泣いていた。「あの日は情緒が普通じゃなかった」とジュリア。張り手もジャーマン・スープレックスもすべて受け止めて、15分時間切れ引き分けで決勝進出を決めた。
「とにかく感情のままに闘いました。盛大な姉妹喧嘩でしたね(笑)。今回は姉として全部、受け止めて包み込んだつもりです。やっぱり今まで、苦しい思いをさせてきちゃったと思うので。闘う中で、互いの3年間をぶつけ合えたと思います。すずも大変な思いをしてアイスリボンのベルトを巻いたんでしょう。10代でここまでやれるか、背負えるのかってくらいしんどかったはず。たくさんの修羅場をくぐってきたんだなって、その重みをしっかり感じました」
ジュリアの試合は“ドラマティック”
決勝戦、もう一つのブロックを勝ち上がってきたのは中野たむだった。すずと離れてからの3年間でライバルストーリーを紡いできた相手だ。昨年3月の日本武道館大会では、敗者髪切りマッチで対戦している。敗れたジュリアは“白いベルト”を奪われ、リング上で髪を切り坊主になった。
「私とたむは真逆なんです。私はたむみたいな奴が鳥肌立つほど大嫌いだし、向こうも同じように思ってるでしょう。一生分かり合えないと思います。
アイツはよく泣き言ったりして、自分の弱い部分も平気でさらけ出すんです。私は“レスラーたるもの強くあれ”と思うんですけど、たむはブリっこで媚びまくる上に“弱い部分をさらけ出して何が悪いの”って感じで。
すべて真逆で、でもプロレスに対する情熱、情念、自分の中に強い信念がある事は共通してるんです。だから本気でぶつかり合える。どっちも間違ってないのかもしれない。でもお互い“こっちが正しいんだ”と証明したくなるんです。ここまで本気でぶつかり合える相手がいるって凄いことだなって。やっぱり特別な存在なんです」