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「あとは任せた」K-1新局面に“武尊をめぐるドラマ”が…ライバル・レオナと親友・大岩にかけた言葉「これであきらめるのは違うよ」
posted2022/10/07 17:06
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takao Masaki
K-1は、この夏から新たなテーマとして「K-1 NEXT」を打ち出している。言うまでもなく『THE MATCH 2022』後のK-1、絶対的エースだった武尊の無期限休業の先にあるK-1という意味だ。
9月11日の横浜アリーナ大会では、休業の発表とともに武尊が返上したスーパー・フェザー級タイトルの新チャンピオンを決めるトーナメントが行なわれた。まさに“NEXT”を争うものだった。
優勝したのはレオナ・ペタス。ベルトを巻いてしばらくすると、彼はK-1オフィシャルYouTubeチャンネルでのインタビューでこう語った。
「ポスト武尊が取るべきベルトだと思ったので。僕かなと」
レオナは武尊のK-1公式戦における(今のところ)最後の対戦相手だった。昨年3月28日、武尊のタイトルに挑んでKO負け。レオナは1年半前に武尊に倒されて獲ることができなかったベルトを、武尊の次の王者として巻いたのだ。
武尊から言われた「あとは任せたよ」
ここで負けたら、もう自分に先はない。ベルトを巻くことができなければ、つまりトーナメントの1日3試合に勝てなければ引退する。そう覚悟を決めて練習し、リングに上がった。「言い訳できないくらい練習しなきゃいけなかった」とレオナ。試合に向けた追い込みトレーニングは、武尊戦のとき以上だったという。
K-1のベルトを見せてあげる。病気と闘う母とも約束していた。約束を果たす前に母は亡くなった。ベルトを墓前に持っていくことが新たな約束になった。それを阻まれたのが武尊戦だった。だがその試合で、新たな約束もした。
「あとは任せたよ」
武尊にそう言われたのだ。レオナ戦に勝った武尊は、そこから本格的に那須川天心戦の交渉と準備に入る。K-1を留守にすることになるわけだ。だからアマチュア時代から対戦してきたレオナに、自分のいないK-1を支えてほしいと声をかけた。新王者決定トーナメントは、レオナにとって武尊の言葉への返事をする場所でもあった。勝って「武尊選手の言葉のおかげで頑張れました」と言いたかった。