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「イチローに欠点あり」ノムさんが日本シリーズで仕掛けた“インハイ心理戦”「彼はまだ若かったし、腹が立ったんでしょうね」 

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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posted2022/10/25 11:01

「イチローに欠点あり」ノムさんが日本シリーズで仕掛けた“インハイ心理戦”「彼はまだ若かったし、腹が立ったんでしょうね」<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

1995年の日本シリーズは「イチローvs古田敦也・野村ID野球」という側面で注目された

「ウチの投手陣は、実際のところギリギリの状態だった。イチローが目を覚ましたら、オリックスのチーム全体が息を吹き返してしまう。そうなれば、とでもじゃないけど抑えきれない。この年、ヒジを痛めて1イニング限定でしか使えなかった高津(臣吾)を投入して、何とか勝つことができました」

もし第5戦を落として3勝2敗になっていたら?

 結局、イチローの打撃成績は19打数5安打の打率.263に終わった。そのうち2安打は、最終戦となった第5戦で放ったものである。戦前から植えつけられた苦悩のもやが晴れる寸前、決着はついたのだ。

「4勝1敗という結果だけを見たら楽勝だと思われるかもしれないけど、もし第5戦を落として3勝2敗になっていたら、神戸で2連勝されて終わっていたと思う。イチローはきっと3本ずつくらいヒットを打ったんじゃないかな。紙一重の勝負でした」

 野村と角の宣伝の甲斐あってか、地味と目されたこの年の日本シリーズは、関東、関西ともに視聴率30%台を連発した。角は1年限りで投手コーチを退任したが、その数字は、日本一の美酒の味とともに、あの秋の記憶にしっかりと刻まれている。

<清原編、松井編につづく>

#3に続く
「落合さんには打たれていいけど…」若き松井秀喜の穴を攻め切った「仰木マジックと専用左腕」とは〈日本シリーズ秘話〉

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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