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人気馬メイケイエールはスプリンターズSでGI初制覇なるか? 気性難の牝馬と池添謙一の覚悟…名手が絶句した日「子供…、あの馬の子供…」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPhotostud
posted2022/10/01 11:00
セントウルステークスを完勝し、初のGIタイトルを狙うメイケイエールと池添謙一
次走のスプリンターズステークスから、気性の難しい馬をなだめることにかけては定評のある池添謙一が主戦となった。なお、桜花賞の道中で弾かれたソングラインに乗っていたのも池添だった。
コンビ初戦となった、昨年のスプリンターズステークスでもまた掛かったが、どうにか乗り切って4着。
その後も、馬具や調教法を工夫するなどの試行錯誤をつづけ、今年初戦のシルクロードステークスでは、スピードの違いで3コーナー手前で先頭に立ってしまったが、外の馬たちを行かせて好位で我慢。チューリップ賞以来となる勝利をおさめ、「暴走娘」が「快速娘」に変身したことを結果で示した。
「子供……、あの馬の子供……」池添が絶句したインタビュー
かつて池添が乗ってきた気難しい強豪として、まず挙げられるのはオルフェーヴルだろうが、2005年の宝塚記念を牝馬として39年ぶりに制したスイープトウショウも大変な馬だった。トレセンで追い切りを拒否して何十分も動こうとしなかったり、ゲート入りを嫌がって発走を遅らせたり、レース前に池添を振り落とし、人と馬が別々にポケットに行ったりという「伝説」を残している。
それでも池添はスイープトウショウを納得させるべく向き合いつづけ、秋華賞、宝塚記念、エリザベス女王杯と、ともにGIを3勝した。
引退レースとなった2007年のエリザベス女王杯(3着)のあと、囲み取材で「次は(スイープの)子供ですね」と水を向けられると、池添は「子供……、あの馬の子供……」と少しの間絶句した。最後は「楽しみにしています」と締めくくったが、さまざまなシーンが脳裏に蘇ったのだろう。あのときの彼の表情を、私は忘れることができない。
今も、同じような覚悟と期待をもって、メイケイエールに接しているはずだ。
前述したように、今年のシルクロードステークスで「変身」したメイケイエールは、その後、高松宮記念5着、京王杯スプリングカップ1着、前走のセントウルステークスをレコード勝ちと、エネルギーをムダにせずにゴールする走りができるようになっている。
あとはGIのタイトルを獲るだけだ。
現在の中山の馬場状態と天気予報からして、かなりの高速決着になると思われる。引いたのは囲まれにくい外目の13番枠。おあつらえ向きの舞台が整った。