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人気馬メイケイエールはスプリンターズSでGI初制覇なるか? 気性難の牝馬と池添謙一の覚悟…名手が絶句した日「子供…、あの馬の子供…」
posted2022/10/01 11:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Photostud
「暴走娘」から「快速娘」に変身した人気者が頂点へと駆け上がるか。それとも、マイルGIを制した超良血馬が「2階級制覇」をなし遂げるか。
第56回スプリンターズステークス(10月2日、中山芝1200m、3歳以上GI)は、日本時間の同日夜に行われる凱旋門賞の陰に隠れがちだが、実に見どころの多い一戦である。
メイケイエール「これほど難しい馬も珍しい」
昨年のホープフルステークスから平地GIで1番人気が13連敗しているなか、1番人気に支持されるのは、ほぼ確実にメイケイエール(牝4歳、父ミッキーアイル、栗東・武英智厩舎)だと思われる。GI勝ちこそないが、現役最多タイの重賞6勝の実績が示すように、スプリント能力は頭ひとつ抜けている。
しかし、その高い能力を効率よく発揮させることが、これほど難しい馬も珍しい。
昨年のチューリップ賞では凄まじい勢いで引っ掛かり、鞍上の武豊が上体を起こして後ろに重心をかけて抑えようとしたが、首を左右に振りながら突っ走ろうとした。結局、武は抑えるのを諦め、3コーナーで手綱を緩めた。あれほど折り合いを欠いてエネルギーをロスしながら、ゴール前でもうひと伸びし、同着とはいえ、勝ってしまったのだから恐ろしい。
桜花賞では、武同様、やわらかく乗ることにかけては天下一品の横山典弘でも抑えることができず、序盤で馬群を切り裂くように上がって行き、最後はさすがに失速して最下位に終わった。
つづくキーンランドカップは流れが速くなる1200mだったのだが、それでも掛かってしまった。向正面で早々に先頭に立つ形になり、7着。
メイケイエールは“エキサイトしている”わけではない
テンから全力疾走しようとするのを騎手が抑えようとすると、馬は首を高くして、顔を左右に振りながら走るので、まっすぐ進むことが難しくなる。そうなると他馬に迷惑をかけてしまう。現に、桜花賞の3コーナー手前で、ソングライン(15着)を外に弾き出す格好になってしまった。ほかの馬をすべて抜き切って先頭に立つと落ちつくようだが、そうして序盤に脚を使うと、最後までエネルギーがもたなくなる。
普段は穏やかなのに、ゲートが開いた瞬間、「別馬」になってしまう。エキサイトしているように見えるが、そうではなく、自分の仕事が他馬を追い抜くことだとわかっていて、一生懸命になりすぎてしまうのだろう。