猛牛のささやきBACK NUMBER
悪送球、バントミス→なぜお立ち台に? オリックス宗佑磨が首位ソフトバンク撃破のサヨナラ打を打てた理由とは?「絶対に全員で優勝したい」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2022/09/22 11:02
宗佑磨のサヨナラ打で首位ソフトバンクに3連勝したオリックス。翌日のロッテ戦にも勝利し、ゲーム差0の2位につける(9月21日時点)
“9”と“10”の境界線が、いい意味で開き直りのきっかけになった。
「エラーの数を自分の頭の中で計算しちゃっていたんです。エラーが一桁と二桁じゃ全然違うよな、とか考えて。でも今日エラーして(今年のエラー数が)10個になったことで、もう余計なことを考えなくなりました。もう関係ない。9個と10個は違うけど、10個と11個は変わんねーなと思って。
やっぱり一桁にとどめたいというのはありました。でもそんな消極的な気持ちじゃダメですよね。今日の4回のあの場面も、正直飛んでくると思ってなかったんです。柳田さんだったし、引っ張りだろうと思っていたから。そういうところもまだまだだなと思いましたね。ワンバンで投げなきゃいけなかったし、バックホームかゲッツーか、ちょっと迷ったところもある。まだまだ、下手くそです」
昨シーズン、三塁手として初めてレギュラーに定着し、優勝に貢献した。素早い反応と柔らかいグラブさばき、そして三塁ベース後方からでも、一塁への糸を引くような送球でアウトにしてしまう強肩は、強いインパクトを残し、昨年初めてゴールデン・グラブ賞を受賞した。
今年はその肩書きを背負い、それにふさわしいプレーをしなければというプレッシャーもあったかもしれない。その中で今年も数々の好守備で投手やチームを救ってきたが、ミスを引きずることもあった。だが今年10個目のエラーで、「自分は下手くそ。練習するしかない」と原点に立ち返り、目の前のプレーに集中できた。
「野球は助け合いのスポーツなんだなと」
後悔も欲も封印し“無”の境地で立った10回裏、2死満塁の打席。コリン・レイの155キロのストレートをセンター前に弾き返し、三塁ランナーの太田椋がサヨナラのホームを踏んだ。
試合が終わると、封じ込めていた感情が湧き出し、涙があふれた。
「長かったー」と息を吐き出しながら、こう続けた。
「本当に今日はみんなに助けられた。田嶋には、僕のエラーで点が入って迷惑をかけてしまったし、そのあと投げてくれたピッチャーもなんとか抑えてくれた。9回は僕がバントミスをしたあとに正尚さんがしっかりランナーを返してくれたし、本当にいろんな人に助けられた。そういうのが1つでも欠けていたら、最後ああならなかったと思うので、本当に野球って助け合いのスポーツなんだなと、改めて思いました」
1敗でもすれば優勝は厳しくなっていたソフトバンクとの直接対決3連戦に3連勝。苦しみながらも、優勝へ勢いづく勝利を勝ち取った。