バレーボールPRESSBACK NUMBER
石川祐希は“あの激闘フランス戦”で何を感じたのか?「もちろん狙いました」「この先は、強い人間だけが残っていくと思います」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byFIVB
posted2022/09/20 11:00
男子バレー世界選手権・決勝トーナメント1回戦で、強豪フランスと激闘を繰り広げた日本代表。イタリアへ旅立つ前に、キャプテン石川祐希に試合を振り返ってもらった
繰り返すようだが、フランスは昨夏の東京五輪、そして今年のネーションズリーグを制した。自国開催である2年後のパリ五輪でも金メダル候補に挙げられる紛れもない世界の強豪だ。
もしもベスト8進出をかけた相手がフランスでなければ、もっと上位へ進めたのではないか。1次リーグを2勝1敗で通過した日本代表の好調さは画面越しにも伝わってきただけに、タラレバとわかっていても、そう憂えたくなるのだが、石川の見方は違う。
「負けはしましたけど、相手がフランスだったからこれだけ内容の濃い試合ができたととらえることもできると思うんです。確かにもしも違う相手だったらもっと勝てたかもしれないし、上に行けたかもしれないけれど、これだけの試合ができたかどうかはわからない。いろいろな要素が絡んだからこその結果であり、こうなったのも運命。フランスでよかった、と僕は思いますね」
「会心のスパイク」に選んだ意外な1本
負ければ終わりのトーナメント。しかも第1セットは完璧に近いバレーボールを見せたフランスに17対25と先取された。
「このまま行ったら嫌だな」
ため息が漏れるようなフランスの強さに圧倒されながらも、石川は勝負を楽しんでいた。
実はこの試合で「会心のスパイク」と振り返った「1本」も、フランスに3点を先行された第1セットの序盤に放ったバックアタックだった。
「コートの真ん中にボールが上がったので、2本目をそのまま打ったら相手のブロックが1枚もつかずに決まったんです。あれは1つ読んだというか、同じような状況で、僕はフェイクセットを上げることが多かったので、相手のミドルは絶対に跳んでこないだろう、と裏をかきました。
あとで映像を見返したらガペもミドルの選手に『跳ぶな』というアクションをしていたところに、僕がそのまま打って決まった。ガペが僕を見て『やったな』みたいな顔をしていて(笑)。あれは面白かったし、嬉しかった。自分の中では“よっしゃー!”と思える1点でした」
五輪を制した相手とはいえ、ネットを挟んで対峙するのはイタリアで同じクラブのチームメイトとして戦う選手でもある。見上げることも、脅威に感じることもなく、たとえ劣勢でも遊び心を忘れずに攻め続けた。