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石川祐希は“あの激闘フランス戦”で何を感じたのか?「もちろん狙いました」「この先は、強い人間だけが残っていくと思います」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byFIVB
posted2022/09/20 11:00
男子バレー世界選手権・決勝トーナメント1回戦で、強豪フランスと激闘を繰り広げた日本代表。イタリアへ旅立つ前に、キャプテン石川祐希に試合を振り返ってもらった
第1セットは失った日本だったが、石川が「もう一度、0対0からスタートだ、とチーム全体が切り替えて臨めた」と振り返るように、ここから追い上げをみせる。
高橋藍のサーブや西田有志のスパイク、リベロ山本智大のレシーブから流れを引き寄せ、2セット目は日本が25対21で奪取。第3セットは失ったものの、一時は5点をリードされた状況から終盤に石川のサービスエースやブロックで追い上げ、デュースまでもつれる接戦に持ち込んだ。第4セットはフランスに逆転されながらも再びひっくり返した日本が25対22で制した。
15点先取の最終セットで先行したのも日本だった。4対1と3点のリードを得ると、現地中継の実況が何度も「あのフランスが負けるかもしれない」と連呼する。
おそらく、たいていのチームならこの状況でズルズル離される。だが、そこで離されるどころか追いつき、追い抜くのがフランスの強さである。逆転、同点、再逆転と1点をめぐる攻防が繰り広げられ、そして15対14の場面で訪れたのが、あの石川のサーブシーンだった。
「1点を獲り切る力が必要だと感じた」
昨夏の東京五輪、負けたらグループリーグ敗退が決まるイラン戦では同じく2対2で迎えた最終セットの冒頭、石川の連続サービスエースが日本を勢いづけた。鮮やかに残る記憶と共に「またここで決めてくれる」と周囲の期待は高まり、石川自身も「行ける」と確信があった。
だからこそ――。
悔しさは、試合を終えても日に日に膨れ上がるばかりだが、得たのは決して、負の感情ばかりではない。
「そんな簡単じゃないぞ、とよくわかったし、もっともっと貪欲に1点を獲りに行かなければ、この先は突破して行けないんだぞ、と思い知らされました」
石川のサーブの後、地力を見せたフランスが日本を16対18で退け、フルセットの攻防を制した。
試合を振り返った石川は自らに掲げた。
「1点を獲り切る。勝ち切る力が、今の僕には必要だと感じました」