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「ムムッ!いいんです!」は兄ジョン・カビラの口癖だった? 川平慈英(60歳)がニュースステーション大抜擢の真相を語る「実は最初、断ったんですよ」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/09/23 11:06

「ムムッ!いいんです!」は兄ジョン・カビラの口癖だった? 川平慈英(60歳)がニュースステーション大抜擢の真相を語る「実は最初、断ったんですよ」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

テレビ朝日「ニュースステーション」のキャスターとして日本サッカーを盛り上げてきた川平慈英。しかし、本業である俳優との両立に悩んだ時期もあった

 93年に行われたアメリカW杯アジア最終予選のイラクとの最終戦、いわゆる“ドーハの悲劇”はスポーツバーで目撃し、言葉をなくした。

「ジョンもいて、テレ朝のカメラも入っていたんだけど、サポーターが歌っていた歌があるじゃないですか。『アメリカへ行こう、みんなで行こう♪』って。あれ、僕たち、残り時間がまだあるのに、『アメリカへ行ける、みんなで行ける♪』って歌っちゃったんですよ。そうしたら……。サッカーの神様に『歌っちゃったね、まだホイッスルが鳴ってないのに。油断しちゃダメだよ』と言われたような気がしたなあ。あの最後のシーンは未だに正視できないんです」

 その4年後の97年、フランスW杯アジア第3代表決定戦のイラン戦は、ジョホールバルからの現地レポートを小宮に託し、川平自身は同じスポーツバーで観戦する。そして、岡野雅行のゴールデンゴールが決まった瞬間、涙を流すところをカメラに捉えられた。

 98年フランスW杯の本大会では現地に足を運んだ。フランスの温泉町エクスレバンでの合宿中のことだ。厳しい報道規制が敷かれるなか、早朝にテレビクルーやジョンと散歩をしていたら、前方から中山雅史が歩いてくるではないか。

「ゴンさんも朝の散歩だったんでしょうね。僕らを見つけるなり、気まずい顔をしたんです。こっちはこっちでクルーと顔を見合わせて、『どうする?』と。ここで直撃すれば、独占映像になる。でも、決戦前の気持ちを乱すわけにもいかないし、各局、垣根を越えて日本サッカーを応援しようという雰囲気だった。そこで『魂送ってますから!』っていうエールだけで、映像は一切撮らなかった。ジャーナリストとしては失格だろうけど、それはそれで僕の勲章、思い出ですね」

「いいんです!」「クーッ!」「ムムッ」

 番組では、視聴者に愛される川平節も生まれた。

「もともと『いいんですか?』『いいんです!』はジョンの口癖だったんです。『生ビール、もう1杯頼んでいいんですか?』『いいんです!』とかね。だから、製造元・ジョン、発売元・俺、みたいな感じ。ジョンには頭が上がらないですね(笑)。『クーッ!』とか『ムムッ』も、日常的に言っていた口癖なんですよ」

 こうした川平節は、サッカー中継における定番となっただけでなく、より広くお茶の間に浸透していった。

 川平がナレーションを務めたバラエティ番組『ASAYAN』でも披露され、お笑いコンビの博多華丸・大吉の華丸にモノマネされたことで、さらに認知された。それが「楽天カードマン」などのCM起用へと繋がっていく。

「華丸さんとはある日、飛行機の中で偶然お会いして。『モノマネをさせてもらっています』と挨拶してくれたので、『ガンガン、やっちゃってください!』と伝えました(笑)」

 もっとも、しばらくの間は『ニュースステーション』のキャスターを務めることにモヤモヤした気持ちがなかったわけではない。

 俺は役者なんだ――。そんな気持ちが強かったからだ。

【次ページ】 久米宏「慈英はミュージカル俳優なので」

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