濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「闘うグラドル」もデビュー、アクトレスガールズの“華がスゴい”新人たちの裏で…エース・青野未来が泣いた理由「まったく追いつけていない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/09/16 11:04
新体制初の後楽園ホール公演、メインで勝利した青野未来
「離れていった選手たちのことは意識しますか?」
「アクトレスガールズでやっていることはパフォーマンス。でも演劇ともまた違って、やっぱりその人の“素”の部分が出るんです。技を受けたら痛いし、だから感情も自然に出てくる。プロレスとは違っても、リングの中には嬉しさも悲しさもあって、それを感じなかったらやってる意味がないと思うんです。練習も去年までと同じ。プロレスの練習をしっかりやらないと“プロレスのパフォーマンス”もできないので」
そんな青野に、少し意地悪かなと思ったがこんな質問をした。アクトレスガールズから離れていった選手たちのことは意識しますか? 青野は声を震わせた。
「意識してないって言ったらウソになりますね……。SNSで自然に情報が入ってきますし。輝いている姿を見ると嬉しくなります。でもやっぱり、それだけじゃないです。今は嬉しいという気持ち以上に悔しさがあります……」
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アクトレスガールズから離れた選手たちは、今はさまざまなリングで活躍している。フリーとなった本間多恵や高瀬みゆきは参戦団体のトップ戦線に。キャリアの浅い桜井まい、月山和香、向後桃、壮麗亜美(三浦亜美)はスターダム入りして飛躍的に実力と知名度を上げた。遡ればなつぽい、ひめかもアクトレスガールズ出身。一期生の安納サオリもフリーで、現在アイスリボンのシングルチャンピオンだ。SAKIはフリーのユニットCOLOR'Sを率いてスターダムにも参戦している。アクトレスガールズを離れたことで、それぞれの華と実力がより広いところで認められるようになったのだ。青野は言う。
「それに比べると、今の自分たちはまったく追いつけていないんです。(団体に残った自分たちも)もっと大きくなれると思ってたのに……」
ジレンマを抱えながらリングに上がる現在
団体が新しい挑戦をするなら、自分もそれをやりたいと青野は思った。だが現実には「プロレスではない」と言いながら、プロレスとうまく差別化できていないものを見せるしかないジレンマを抱くことになった。思い切り“プロレス”に邁進しているかつての仲間たちには、引き離されてしまったという感覚がある。強がってそれを隠すことさえできない。
「悔しいけど……いつか絶対に超えなきゃいけない」
アクトレスガールズだからできることがきっとある。青野はそう信じる。だがそれがどんなものなのかは、まだ見えていない。
旧体制で青野に続く有望株だった松井珠紗も、現体制ではトップの一角。やはりジレンマを抱えながらリングに上がる。エンターテインメントと謳いながらストーリーやテーマのない闘いが続くことへの危機感を訴えたこともある。このままでは“プロレスごっこ”になってしまうと。
「ポイントマッチというのは“良くも悪くも”という感じだなと。リング上がすべてじゃないですからね。ポートレートの売上もポイントになって勝敗に関係してくるというのを、どう受け止めればいいのか。私はこれまで“リング上がすべて”と思ってやってきたので……。正直、今のアクトレスガールズは前に進めていない気がします。でも、そんな時期をいかに無駄にしないで過ごすかも、きっと大事なんだと思います。私はアクトレスガールズをもっと面白くしたいし、変えていきたい」