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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
北大法学部卒→外資系企業から異例の転身…スターダムで奮闘する月山和香(30歳)はなぜプロレスラーになったのか?《特別グラビア》
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/09/09 17:02
北大卒業後、外資系企業での会社員生活を経てプロレスラーとなった月山和香。インタビュー前編ではそのユニークな経歴を振り返ってもらった
「大学くらい好きなことをやろうかとも思いましたけど、逆に苦手なことを勉強したくなった。社会が苦手だったから、じゃあ法律を勉強しよう、と。特に力を入れて学んだのは刑事訴訟法。法を犯した人が、どうやって裁判まで行くかという流れですね。でも、弁護士になるつもりはありませんでした」
意外にも、月山は冷静に現実を見ていた。
「ちょうど司法試験の制度が変わって新司法試験になって、弁護士になるには法科大学院に通う必要があった。逆に、大学院に行けば2人に1人くらい合格する。それじゃあ、絶対に弁護士は余るなって思ったんです。実際に今、余っているし。大学院に行くお金がもったいないな、って。やろうと思えば、今からでも行けますよ」
筆者が「プロレスラーから弁護士に転身というのもいいですね」と水を向けると、月山は「そんな選択肢、作りますか!?」と笑った。
外資系の会社員時代とプロレスとの出会い
「就職は違う業種を2社ずつ、10社ほど受けたんですが、最初に内定をもらったところに行きました。そう決めていたんです。連絡をもらったその日のうちに『行きます!』って」
月山が就職したのは外資系の医薬品・医療機器メーカー。高い基本給に加えて、営業成績が良ければ、インセンティブの報酬がもらえた。
「社会人になってお金が貯まったおかげで、あらためて『自分のしたいこと』を考える精神的な余裕ができました。それで学生時代からやっていたお芝居を、本格的にやりたくなった。会社員時代に知り合った演出家に、とある大きい劇場に出てみないか、と誘われたんです」
月山の心はすぐに動いた。そして、2年間勤めた会社をあっさり退職する。
「何年間かお芝居をやっても大丈夫なくらいの貯金がありました。やっぱり、お金があると選択肢が増えるんだなぁ、と。私、手相も金運だけはいいんです(笑)。お芝居のギャラは1カ月稽古しても本番の8ステージで4万円くらい。それでも当時は楽しくて、お芝居とバイト代だけで生活できていました」
だが、月山はひょんなことからプロレスの世界に足を踏み入れることになる。