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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
北大法学部卒→外資系企業から異例の転身…スターダムで奮闘する月山和香(30歳)はなぜプロレスラーになったのか?《特別グラビア》
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/09/09 17:02
北大卒業後、外資系企業での会社員生活を経てプロレスラーとなった月山和香。インタビュー前編ではそのユニークな経歴を振り返ってもらった
休みの日は1人で美術館や映画館に行く。それが普通だと思っていた。だが、成長した妹や弟が友達と遊びに出かける様子を見て、「この子たちには、友達という存在がいるんだ!」と、初めて自分がいつも独りぼっちなことに気付いた。
それでも月山は「1人で遊ぶのが大好きなんです」と繰り返してニッコリと笑った。
「学校に通えなかった子」が北大に合格するまで
月山は小さいころから朝が弱かった。子どもはみんなそういうものだと思っていた。でも、小学校の高学年になっても、毎朝なかなか起き上がれなかった。いざ起きても、また布団に倒れてしまう。疾患による自律神経の異常だったのだが、月山は自分について「さぼり癖のある人間なんだな」と認識していた。
「通学の電車でも、座席から立てない。立ち上がってもふらっと倒れちゃう。うつ病なのかもしれないと思いました。今考えると低血圧でもあったんでしょうけど、中2の時は4日くらいしか学校に行けませんでした」
学校には通えなかったが、「教科書が友達」というほど勉強そのものは好きだった。
「中学は義務教育だから卒業できました。『高校は出席日数が足りなかったら、進級できないよ』と担任の先生に言われましたが、『体調が良くなるかもしれないから頑張ります』と、最初はそのまま全日制の高校に。でもやっぱり通えなくて、編入という形で通信制の高校に移りました。試験は『将来の夢』という作文だけ。名前さえ書けば受かるレベルの高校です」
最初、月山は大学に行くつもりはなかった。しかし徐々に自律神経が整い、体調が改善したことで、「これなら大学にもちゃんと行ける」と受験勉強に励むことになる。
「高校を卒業して1年アルバイトして、受験勉強。私はコツコツ型、アリみたいなんです(笑)。しっかりと勉強できたので、大学は受かると思っていました」
勤勉な姿勢が功を奏し、月山は国立の北海道大学に合格した。
「北海道はすべてが新鮮でした。野菜も魚もおいしいし、豚ですらおいしい。豚丼なんか最高ですよ。何を食べても安くておいしい(笑)。暑いのが苦手な私にとっては、雪が降る気候もベスト。それまで運動なんてロクにしたこともなかったのに、スポーツジムにも通うようになりました」
学校というものに慣れていなかったこともあって、1年時のオリエンテーションでは人の多さに圧倒された。当時のことを「自己紹介なんてとてもできない。お腹が痛くなっちゃって、その場からいなくなりました(笑)」と振り返る月山にも、大学では友達ができた。