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武豊が語る“53歳ダービー神騎乗→凱旋門賞”「ノリちゃん(横山典弘)にホメられたのが…」「ドウデュースはすでにそういう存在」
posted2022/10/01 11:01
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Takuya Sugiyama
デビュー2年目の'88年にスーパークリークで菊花賞を勝って最年少GI勝利記録(19歳7カ月23日)を華々しく塗り替え、同年にデビュー後最速年間100勝(最終的に113勝)という快記録も打ち立てた武豊。ありとあらゆる最年少記録を次々と更新したことで「天才騎手」の名をほしいままにした。その後も誰も成し得なかったハイレベルのキャリアを積み重ねたことが50代を迎えて実を結び、最年長記録となって再び花開き始めている。広くスポーツ界を見渡してみても、武ほど息の長い現役トップアスリートはほかにいない。
あとから見てクリストフはやっぱり凄いなと
ドウデュースで今年のダービーを勝ったことで、史上最多6度目のダービー制覇となった。53歳2カ月15日は、増沢末夫('86年ダイナガリバー)の48歳7カ月6日を36年ぶりに更新する最年長記録。20代、30代、40代、50代でのダービー制覇ももちろん史上初で「そう考えるとスペシャルウィーク('98年、29歳で初勝利)で勝てたのは本当に価値が高かったなあ」と、レジェンドの笑顔に大きな達成感が浮かび上がる。
「ダービーの最後の直線で抜け出すって、これ以上ない最高の気分。スペシャルウィークが馬群を切り裂いたときに見た素晴らしい景色を、今年はドウデュースに見せてもらいました。みんなが伸びている中での、あの切れ味はホントすごかった。一瞬で、完全に抜け出してくれましたからね。ちょっと早過ぎるかもとボクも少し心配しましたが、馬場状態を考えたら、あそこで突き放したらほぼほぼ大丈夫。勝った、と思いましたね」
――それでも最後の最後にルメール騎手のイクイノックスが迫って来ました。
「ね、来ましたね。さすがですよね。ボクは(いつでも踏み出せるようにという意味での)安全策でずっと外目を走っていましたが、クリストフは一番外の枠からのスタートなのに、コーナーは内を回って、ロスなくボクの後ろについて来ていました。まさに完璧な騎乗です。皐月賞と乗り方をガラッと変えたのも勇気が要ること。あとからビデオを見て、あれができるクリストフはやっぱり凄いなと思いました」
関係者が「神騎乗」と称賛のダービーを武豊自身が分析
――いつも枠順を見てからシミュレーションを組み立てるとおっしゃっていますが、今回はどんなプランでした?
「13番という知らせを聞いて、最初はまあまあかなと思いました。そのあとで全馬の枠順を確認して、めっちゃいいやんと。枠が近いダノンベルーガ(川田将雅騎乗、12番)、ジオグリフ(福永祐一騎乗、15番)の後ろあたりから進められそうですからね。イクイノックスの出方だけは読めなかったけど、ダノンとジオは中団か、もう少し前にいるだろうというイメージ。どスローになることもないだろうと読みました。もちろん、競馬だからなにが起こるかわからない。そこまで決め込んで実戦に臨むことはほとんどありませんし、今回もそうでした」