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プロ野球PRESSBACK NUMBER
カープ名捕手・達川光男が明かす“あの伝説の真相”「“ささやいた”ことは神に誓って、ない!」「昔はハードレンズだったからね」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/08/30 17:26
デッドボール、ささやき戦術、コンタクトレンズ大捜索……。野球解説者・達川光男が語る“伝説の真相”とは(写真は2015年)
――え? キャッチャーマスク越しに打者を見上げて話しかける姿を見ていましたが、あれは……。
「野村さんはね、ちょっと(バットの)ヘッドが下がってるぞ、とかなんとか言ったりするいうけど、ワシは言えないよ。野村さんには集中力のなかの余裕があった。ワシなんかは集中しとるけど余裕なんかないんだよ。話しかけると言うてもバッターが打席に入ってきた時に“こんにちは! ヤクルト戦ではよう打っとったねぇ”とかそんなもんよ」
とはいえ、当時の対戦相手の打者からは、打席で達川さんに話しかけられまんまと術中にはまったという類の逸話が数々聞かれている。野球とは全く関係のないことを話しかけられた、広島弁で喋り続けられた等々。Wikipediaでは「ささやき戦術」なる項目でまとめられているほどだ。
「ないない! 相手を混乱させて打ち取ろうなんて思ったことは1回もないよ。しゃべる言うても、ピッチャーにアドバイスしたりね。“うわぁ! 危なかったなぁ”とか言ったりね。あれは独り言よ」
――なるほど。「ささやき」ではなく「独り言」ですか。
「そう。バッターボックスに入る前にちょこっとね。ホームラン性の当たりを打たれたりしたら“ああ危なかったなあ”くらいのことは言ってもね。あとはアンパイアに“今のいいところでしたねぇ”とかね。それ以外のことは言ってないよ。みんな大げさに言っているだけで。ましてや、カーブカーブ! 言うて真っすぐを投げさせたり、真っすぐ言うてカーブを投げさせたりとか、そういうのはね、マナーとして失格。ゴルフだって、アドレスに入ったら絶対しゃべらないでしょ。それと一緒でバッターが構えたら絶対に話しかけない。それをしゃべりかけるのは、この業界からNGよ」
「独り言」に動じなかった“あの名選手”
――確か山崎武司さんが「次真っすぐだぞ」と達川さんから言われたけれど全然当たらなかったと話されていましたが……。
「それはもう、大野(豊)とか川口(和久)あたりの真っすぐなら打てないよ。18、19歳の頃じゃね。それは予告しても打てない。彼はサービス精神が旺盛だからそうやって話すけど、教えたなんてことはない。球種を教えるなんてご法度だよ。まあ、“これがプロの真っすぐだ、見とけよ!”とかそんな感じのことでね」
――達川さんの「ささやき」に動じなかったバッターは?