もちろん、チームプレーが大前提だが、4番に座る山田への絶対的な信頼感が、より中瀬に繋ぎの意識を強くさせている。

「回し甲斐があるというか、『なんとかしてくれる』って頼れるバッターなので。自分がシングルでも山田に長打が出れば点が入るので、打席でやるべきことは明確です」

　鳴門戦で失点を招くエラーをしてしまった男がサードへの内野安打を放ち、同点。一、二塁の絶好機で打席に入った山田が、2ストライクからの3球目。高めのストレートをレフト線へ弾き返し、試合をひっくり返した。

2回戦の3回裏、適時二塁打を放ち、ガッツポーズする山田 ©KYODO

　自らを援護した山田が安堵する。

「『ここは何としても打たないと』と思っていました。打てていなかったらピッチングでもズルズルといってしまうところだったので、打ててよかったです」

　4回からはピッチングでの不覚を挽回するように、低めに変化球を集めるピッチングに切り替え4回以降は無失点。2試合連続2桁となる12奪三振の完投で締めた。

山田「改めて『近江高校に入ってよかった』って」

　この試合も結果的には山田が強烈なインパクトを与えたわけだが、淡々と報道陣からの質問に受け答えしていたなかで、顔がほころぶシーンがあった。

　それは、チームメートに関すること。

　3回に仲間が作ったチャンスについてどう思うか？　そう聞かれると、山田は「いやぁ」と大きく息を吐き、しみじみ言葉を編んだ。

「本当に心強い仲間だなって思いましたね。改めて『近江高校に入ってよかった』って試合になりました」

　不覚をも力にする。

　甲子園での経験値が、また上がる。仲間を助け、助けられ、近江はまた強くなった。

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