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清宮幸太郎23歳(早実→日本ハムドラ1)に今まで辛口すぎたのかも… 「オールスターのサヨナラ弾」を生で見て感じた“大砲の転機” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama/JIJI PRESS

posted2022/08/02 11:04

清宮幸太郎23歳(早実→日本ハムドラ1)に今まで辛口すぎたのかも… 「オールスターのサヨナラ弾」を生で見て感じた“大砲の転機”<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama/JIJI PRESS

オールスターでは36年ぶりとなるサヨナラ弾を放った清宮幸太郎。早実時代からその期待値は高かった

 BIGBOSSこと新庄剛志監督になって、清宮は「太りすぎ」を指摘され、体を搾り上げた。また、怠慢プレーがあれば、新庄監督は歯に衣着せぬ厳しさで、清宮を叱った。

 これが清宮にとっては、良い薬になったのかもしれない。打率こそ低いものの、前半だけで11本塁打を打ち、殻を破りつつある印象を受けた。

オールスターでの柳田悠岐の気遣い

 そして、オールスターゲームのプラスワン投票で、清宮は初めてのオールスターに選ばれた。すでにセの不動の4番になっている村上宗隆とは大差がついているが、ようやく同じステージに上がることができたのだ。

 PayPayドームで行われた第1戦、清宮はホームランダービーに出場する柳田悠岐の打撃投手を務めた。場内アナウンスがそれを紹介すると拍手が起き、清宮はぎごちなく挨拶をした。清宮の投じる緩いボールを柳田は第1試合で2本、第2試合では7本、スタンドに叩き込んで決勝進出した。チームは違うとはいえ、柳田は滑り込みでオールスターに出ることになった清宮に、球宴独特の雰囲気に慣れさせようと、打撃投手に指名したのではないか。

 4回のインターバルで、今年ブームになった「きつねダンス」をパの6球団のチアガールが踊った。ベンチの清宮はキツネ耳のカチューシャを被って、嬉しそうに踊りに加わった。柳田も誘っていたのがほほえましかった。

 清宮は7回表から左翼の守備に就き、7回裏1死に打順が回ってきた、相手投手は阪神の湯浅京己。独立リーグ富山出身の叩き上げの湯浅にとって、同い年の清宮は少し前まで見上げるような存在だったはずだ。清宮は湯浅から四球を選んだ。ただこの試合の開始直後、セの先頭打者、ヤクルトの塩見泰隆は初球を振り抜いて左前打を打っている。オールスターは細かい作戦などないのだから、若手なら山っ気たっぷりに振りに行くべきだ。ここで四球なんかいらないんだ、と思った。

劇的サヨナラ弾にパのスターたちが喜んだ

 そして最終回、二死走者なしで清宮の2回目の打席が回ってきた。

 相手の広島・森下暢仁は、7年前のWBSC U18ワールドカップでは大分商3年で、清宮とチームメイトだった。そんな森下は昨年の東京五輪でも先発の柱として活躍しただけに格が違うか……との思いがもたげた。2ストライクと追い込まれる。ここは引き分けだな、と思った刹那、清宮は低めの球を救い上げた。体がぐんと伸びてボールを押し込むような動きをし、打球はペイペイドームのホームランテラスに吸い込まれた。

【次ページ】 ここ7年、清宮に対して辛口すぎたのかもしれない

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