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フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「ユヅは僕のために泣いてくれたんだ」ハビエル・フェルナンデスは“羽生結弦の決意表明会見”をどう受け止めたのか?《独占インタビュー》
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byJMPA
posted2022/07/23 11:03
2018年平昌五輪を終え、清々しい表情の羽生結弦とハビエル・フェルナンデス
フェルナンデスが忘れられない“羽生と過ごした特別な時間”
フェルナンデス自身も経てきた道だった。彼は3度目のオリンピックとなった2018年平昌オリンピックで、競技引退を羽生に伝えた(実際にはその翌シーズン欧州選手権のみ出場し、7連覇を達成した)。フェルナンデスは羽生より3年と8カ月年上なので、奇遇にも二人は27歳という同じ年齢で競技を卒業したことになる。
「平昌オリンピックのメダル授賞式の後の時で、ユヅと、そしてその場にいたショウマ(宇野昌磨)に僕は『君たちと一緒に試合に出るのは、これが最後だよ。今まで同じ大会に出られて本当に嬉しかった』と言ったんです。そうしたら驚いたことに、ユヅは涙ぐみました。そして僕と戦えなくなるのは寂しい、もう少し一緒に戦って欲しいけれど、でも僕の意志を尊重して理解する、と言ってくれました。これまで一緒にトレーニングをしてきた彼が、僕のために泣いてくれたことに驚きました。すごく特別な瞬間で、あの時のことは一生忘れないだろうと思います」
「ユヅはトップでいられるうちに、決断をしたかったんだと思う」
「僕自身も経験があるので、よくわかるのですが、アスリートにとって競技から身を引く日がいつか来るのは、避けられない。悲しいけれどそれが現実です。でも僕個人は、まだトップで競えるうちに身を引こうと思った。実際のところ当時、トレーニングをしていくのが身体的に年々きつくなっていったし、周りの若手たちがどんどんうまくなっていくのを実感していました。
ユヅと一緒にトレーニングをしていて、とても彼のようなペースでのハードな練習は続けていけないな、とも思いました。そろそろ次の世代に舞台を譲る時が来た、と思ったんです。ユヅも同じように、まだトップでいられるうちに潔く決断をしたかったのだと思います。ただぼくと違うのは、彼はこれからもずっとトレーニングを続けていくと言っていることですね」
羽生は記者会見の場で、これは「引退」ではなく、プロ「転向」であることを何度も強調し、今後プロとして4アクセルへの挑戦なども含め、高いレベルを保ったままスケート人生を続けていくことを誓った。