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「一撃必殺で仕留めろ」小島聡51歳が語るハンセン直伝のラリアット「一生の宝になりましたね」
posted2022/07/16 11:05
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
51年ものの丸太のような腕。
腕回りの太さについてGHCヘビー級チャンピオン、小島聡は「測ってませんけど50㎝くらい」と明かす。あのマイク・タイソンよりもぶっとい腕から放たれるラリアットが彼のフィニッシュホールドである。
新日本の若手時代、凱旋帰国した1996年から使い始めている小島の象徴ではあるものの、当時は力任せにぶん殴るような形で見舞っていた。ラリアットは多くのレスラーが使っており、インパクトが格段大きかったわけでもなかった。
あることをきっかけに、ラリアットへのスタンスを考え直すようになる。それがラリアットの本家本元であるスタン・ハンセンに弟子入りしたことだ。新日本から全日本に移籍した2002年。6月に入ってアメリカ・アトランティックシティに遠征した際、ハンセンが来場すると聞いてコンタクトを取ってもらうことにした。
「ずっとプロレスファンでしたから、ハンセンさんはあこがれっていうか雲の上の人。そんな会えるチャンスなんて滅多にないじゃないですか。関係者を通じて会ってお話を聞きたいって意思を伝えたら、快く受け入れていただきました」
ハンセンから学んだ一撃必殺のラリアット
ハンセンがレスラーにラリアットの極意を伝えること自体実に初めてだったという。打ち方の技術的な面よりも心構えのほうに時間が割かれた。
「もう何度も言うんです。“フィニッシュとして使いたいのであれば一撃で仕留めると思わなきゃダメだ”。むやみやたらと連発するんじゃない”と。おかげで意識を変えることができました」
ハンセンのウエスタンラリアットは言うまでもなく一撃必殺。最後のところでアメリカンフットボール仕込みのタックルのように前傾で踏み出し、体全体のパワーでカチ上げる様は迫力満点だ。食らった相手は5カウントあってもきっと起き上がれない。
小島は対照的に乱れ打ちタイプだっただけに、マインドをガラリと変えた。帰国後は乱発を止め、一撃に全神経を注ぐことにした。ウエスタンラリアットを参考にしてカチ上げ系に改良。首もとに当たるポイントですべてのパワーを吐き出す。納得がいくフィニッシュホールドに近づいていった。
「意識が変わるとともにラリアットに対する思い入れがどんどん強くなっていきました。一発出したら、もうそれで倒し切るんだ、と。直接教えていただいたことが自分にとって一生の宝になりましたね」