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なぜ大阪桐蔭の主将が「自分たちは力が足りない」と繰り返すのか… 高校野球最強校に芽生えた「恐怖心」のきっかけ〈3度目春夏連覇へ〉 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byNanae Suzuki

posted2022/07/18 06:01

なぜ大阪桐蔭の主将が「自分たちは力が足りない」と繰り返すのか… 高校野球最強校に芽生えた「恐怖心」のきっかけ〈3度目春夏連覇へ〉<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

センバツを圧倒的な力で制した大阪桐蔭。3度目の春夏連覇へのスタートを切る

 高校からプロに入る選手は当然、技術が高い。ただ、いつも状態が万全とは限らない。相手から徹底マークされれば、力を発揮できない時もある。実際、'12年のセンバツは接戦が多かった。準々決勝は9回に2点を奪って逆転し、準決勝は同点の8回に勝ち越した。苦しんだ末にたどり着いた頂点だった。'18年のセンバツも、準決勝は延長12回サヨナラ勝利。決勝も先制を許し、終盤までもつれた展開を制した。

 一方、自分たちの「力のなさ」に恐怖心を抱く今年のチームは投打で絶対的な選手がいないという自覚から、個に頼らず、チームで戦う意識が共有されている。今大会、投手を除くレギュラー8人のうち7人が、通算打率3割を超えた。大会記録を更新したチーム11本のホームランは7人の打者によるもので、特定の打者に偏っていない。自分で試合を決めるのではなく、センターを中心に弾き返す打撃で次の打者につなぐ。ホームランはその結果でしかない。あくまで束になって戦う姿勢が切れ目のない打線を作り出した。

 恐怖心から生まれた大阪桐蔭の強さは、大会を通じて、相手に恐怖心を植え付ける圧力に変わっていった。

「先輩たちに比べたら、まだまだ力がありません」

 今夏は4年ぶり3度目の春夏連覇に挑む。西谷浩一監督は「今年のチームは一生懸命やる選手が多くて、いいチームだと思います。いいチームから少しずつ強いチームに変わっている発展途上」と評した。

「発展途上」にもかかわらず、圧倒的な力を見せた大阪桐蔭に死角はあるのか。練習や対策が難しい変則投手、ペースを狂わせようとする奇襲など、他校は勝機を見出すために、あらゆる策を講じるだろう。しかしセンバツで頂点に立ってもナインに慢心はない。星子は優勝の余韻に浸ることなく、あの言葉を口にした。

「先輩たちに比べたら、まだまだ力がありません」

 この夏、大阪桐蔭が敗れるスコアボード。イメージするのは難しい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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